エムバペの覚醒を間近で見たジェルマンがモナコでのあのシーズンを振り返る「かけがえのないもの」
サンフレッチェ広島 ヴァレール・ジェルマン インタビュー 中編
今のJリーグでは、さまざまな国からやってきた多くの外国籍選手がプレーしている。彼らはなぜ、日本を選んだのか。そしてこの国で暮らしてみて、ピッチの内外でどんなことを感じているのか。今回はサンフレッチェ広島のヴァレール・ジェルマンに話を聞いた。華やかなキャリアを持つフランス人アタッカーの横顔に迫る。
【「全般的に日本の方がオーストラリアよりレベルが高い」】
2023年の夏、ヴァレール・ジェルマンは初めてフランスを離れ、オーストラリアのマカーサーに加入した。プロデビューしてからそれまでの12シーズンはモナコ、ニース、マルセイユ、モンペリエでプレーし、全公式戦通算で3桁の得点を記録してきた。マカーサーでの1年目も同16得点、2024-25シーズンは半シーズンで同11ゴールと、2シーズン連続で2桁得点をマークしていた。
リーグカップで優勝を果たし、日本でのデビューシーズンにタイトルを獲得したヴァレール・ジェルマン(中央) photo by Masashi Hara/Getty Images
ところがサンフレッチェ広島に移ってからは、ここまでJ1で2得点、リーグカップで2得点と計4ゴールのみ(広島でのデビュー戦となったACL2のライオン・シティ・セイラーズ戦で得点したが、出場資格がなかったことが発覚し没収試合に)。その理由をジェルマン本人はどう考えているのだろうか。
「オーストラリアでは最前線の中央を任されることが多かったが、広島ではやや低めを担うこともあるので、それが影響しているかもしれない。そして全般的に、オーストラリアと日本のフットボールを比較すれば、間違いなく日本の方がレベルは高い。テクニックや規律はもちろん、守備の個人戦術と組織戦術が非常に優れているチームもある」
一番厄介だったのは、あのチームだという。
「町田(ゼルビア)のディフェンスには手を焼いた。個々のフィジカルと能力が高く、クロスの対応が実にうまい。さりげなくシャツを掴んだりしてくるように、狡猾さも備えている」
日本で対峙する守備者は想像以上に手強く、ジェルマンの数字は思うように伸びなかった。それでもリーグカップでは湘南ベルマーレとの準々決勝、横浜FCとの準決勝と、勝負どころでネットを揺らし、チームの決勝進出に寄与。柏レイソルとの決勝では、3-1の終盤に投入され、スコアをそのまま維持して、3年ぶり2度目のトロフィーの獲得に貢献している。
「本当に嬉しかった。出番は短かったけど、優勝の瞬間をピッチ上で味わうことができて最高だった。自分にとっては、広島に来て1年目のタイトルだ。決勝には家族も観に来てくれていたから、特別な日になったよ。加入した時に、タイトルを獲得したいと言ったとおりに、それが実現できたんだ。とても良いシーズンになっているよ」
1 / 3
著者プロフィール
井川洋一 (いがわ・よういち)
スポーツライター、編集者、翻訳者、コーディネーター。学生時代にニューヨークで写真を学び、現地の情報誌でキャリアを歩み始める。帰国後、『サッカーダイジェスト』で記者兼編集者を務める間に英『PA Sport』通信から誘われ、香港へ転職。『UEFA.com日本語版』の編集責任者を7年間務めた。欧州や南米、アフリカなど世界中に幅広いネットワークを持ち、現在は様々なメディアに寄稿する。1978年、福岡県生まれ。

