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「考・体・心・技」を信条とする塩谷司 37歳になる彼が最優先する、レジェンドたちが継承してきた広島のDNAとは (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 ただ、近年は動けなくなっている自分も自覚しているので。全盛期だと自覚している2014年頃に比べても、全然動けていない。当時より気持ちの部分はもっとうまくコントロールできるようにはなっている気がしますけど、客観的に自分のプレーを見ると『ああ、無理していないな~』って思います」

 思えば、今シーズンもほとんどの試合で先発のピッチに立ってきた塩谷だ。第36節終了時点でリーグ最少失点(26)の守備での貢献はもちろん、機を見た攻撃参加も健在だ。

 11月1日のルヴァンカップ決勝を前に「新スタジアムが出来たなかでクラブの発展を考えても、広島にとってこれを獲れるかどうかはすごく大きな意味を持つ」とタイトルへの想いを口にしていた柏レイソル戦でも、フル出場でいぶし銀たるプレーを光らせ、チームの3年ぶりのタイトル獲得に大きく貢献した。それでも――。

「確かに試合には出してもらっていますけど、周りの選手に任せることも増えたし、毎試合『俺、走れないから、みんな走ってよ。大事なところはちゃんとやるから』くらいの気持ちでピッチに立っています。無論、今も自分の全力で戦っていることに嘘はないです。

 けど、その大事なところすらついていけなくなったら、それはさすがにやめ時だろうし......。っていう感じで、近年は繰り返し、引退について考えるんですけど、なんせ結論が出ない。3人の子どものうち3番目が今2歳で、その子が僕をサッカー選手だと理解してくれるくらいまでは頑張りたいなと思う自分もいますしね。よく『やり切った』って引退していく選手もいますけど、自分がどうなればやり切った感覚になれるのかもわからない。

 広島でキャリアを終えるつもりで帰ってきたけど、じゃあ、仮に広島から『来年は契約しません』と突きつけられたとして、すぐに『じゃあ引退します』となるのか? そこで、もし他のチームからオファーをもらったら、どんな感情になるのかも見えてこない。2022年にタイトルを獲ったら『もうひとつ獲りたい』って欲が出たように、この先また違う欲が出てくるかもしれないし......ってことを堂々巡りで考えています」

 ただ、現時点で明らかなのは、これまで過ごしてきたキャリアには微塵も悔いがないこと。そう言い切れるくらい、毎日を懸命に戦ってきたこと。キャリアを通して彼が信条としてきた「サッカー選手は心・技・体ではなく『考・体・心・技』の考えでサッカーと向き合ってきてよかった」ということ。そして、「そう思えている自分は、とても幸せ」だということ。

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