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37歳・伊藤翔が追求する"やりがい"「横浜FCが今季、J1に残留できるかどうかは大きなターニングポイントになる」 (5ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

「試合を見ている人からすれば、どのチームで、どんな取り方をしても、10本のうちの1本を決めても、1本中の1本を決めても、1点は1点に他ならないとは重々理解しています。僕も、そこに言い訳をするつもりもない。でも正直、チャンスの数や出てくるボールの質というところで、上位チームのほうがより多く、質の高いボールが出てくるのは間違いないと思います。

 だからこそ、FWとしては葛藤もあるというか、点を取る難しさを感じているのも正直なところです。けど、このクラブに来た以上、それをどう見出していくか、このチームでどうすれば点を取れるのかを考えるのが僕の仕事なので。これまで以上に周りの選手に要求しなくちゃいけないし、動き方の工夫もしなくちゃいけない。なんなら自分がやってきたすべてのことを注ぎ込めなければ、1点はますます遠くなるんじゃないかとも思っています。

 でもそれにチャレンジすることも、僕の"やりがい"につながるものなので。日々、これまでのキャリアを全部落とし込まないと得点はできないぞ、と自分に言い聞かせてゴールを目指しています。それが、この世界でキャリアを続けるということでもあると思うから」

 無論、それを何がなんでもチームのJ1残留につなげることも、使命に感じながら。

「僕が在籍した5年間も、J2とJ1を行き来してきた現状があるなかで、このクラブの未来を考えた時に今シーズン、J1に残留できるかどうかはすごく大きなターニングポイントになる気がしているんです。これまで、カズさん(三浦知良/現アトレチコ鈴鹿)に始まって、俊さん(中村俊輔コーチ)、(松井)大輔さんら、いろんな経験者がこのチームに加わってくれたことで、少しずつ環境が整えられ、クラブとしてもチームとしてもいろんなことが積み上げられてきたなかで、それをより加速するには、ここで踏ん張ることがすごく意味を持つんじゃないか、と。

 横浜FCに限らず、この世界はチーム力が落ちていくのは一瞬だけど、上がっていくのは本当に少しずつしか求められないからこそ、積み上げている最中にある今の状態を、また元に戻したくない。そこを、自分のやりがいとセットで求めることで見えてくるものがあると信じて最後まで戦い抜こうと思っています」

 スパイクを脱ぐその瞬間まで「これが自分のキャリアだ」という姿を示し続けるためにも。

伊藤翔(いとう・しょう)
1988年7月24日生まれ。愛知県出身。高校時代に「和製アンリ」と称されて脚光を浴びた万能FW。2007年、中京大中京高からフランス2部リーグ(当時)のグルノーブル入り。当時、有望な高校生が国内クラブを経由することなく海外へ渡ることがなかったため、大きな話題となった。グルノーブルに4シーズン在籍後、2010年6月に清水エスパルスに移籍。2014年には横浜F・マリノスに完全移籍した。その後、鹿島アントラーズ、横浜FC、松本山雅FCでプレー。2022年、横浜FCに復帰して奮闘を続けている。

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