37歳・伊藤翔が追求する"やりがい"「横浜FCが今季、J1に残留できるかどうかは大きなターニングポイントになる」 (4ページ目)
「自分がサッカー選手としてのキャリアを締めくくるにあたって、『サッカーはもういいや』と思うのか、『サッカー、ありがとう!』と思いながら引退するのかによって、のちのキャリアの過ごし方が変わってくる気がしているんです。もちろん、いわゆるセカンドキャリアも、ある意味、選手時代と同じで"求められること"が前提で、これまでの成績や人間性などいろんなことが加味されるのもわかっています。
ただ、未来の可能性はひとつではないと思うなかで、自分がそのなかから何かを選ぶにあたって、選手としての晩年にどんな思いを"サッカー"に抱くのか、そこにどんな"やりがい"を感じるのかは、すごく大きな意味を持つ気がしています。実際、これまでは想像していなかった"指導者"みたいなことも、横浜FCに来て、この年齢や立場になって、プレーでもそれ以外のところでも『チームのためにできることは?』をより深く考えるようになったから、ゼロだと思っていた可能性が1とか2くらいにはなった気もしますしね(笑)。
特に、過去に在籍したクラブと違って、横浜FCはJ1での経験値もまだ浅いクラブだからこそ、これまでとは違う役割を求められている部分もある。そういうことを全部ひっくるめて、残りのキャリアでは自分なりの"やりがい"を追求していこうと思っています」
これまで在籍したチームとは違う役割を求められているのは、彼がキャリアの信条としてきた"点を取る"ことについても言えることだ。
というのも、彼の言葉にもあるとおり、横浜FCはそれまで彼が在籍した清水、F・マリノス、鹿島といった『オリジナル10』のクラブに比べて、J1リーグでの歴史はそう長くない。初めてJ1リーグを戦ったのは2007年だが、その後もJ2降格とJ1昇格を繰り返し、伊藤が加入した2021年以降の5シーズンも、1年ごとにJ1とJ2を行き来するシーズンが続いている。そういった状況下で、点を取ることを追求するのは、過去に在籍したクラブとはまた違う難しさがあるのは言わずもがな、だ。
現に今シーズンの横浜FCの戦いを振り返っても、そのチャンスの数、前線に送り込まれるボールの質、シュートを打つ回数は正直、そう多くはない。たとえば、彼が今シーズンの初ゴールを決めた神戸戦を振り返っても、対戦時は3位に位置していた神戸のシュート数が13本だったのに対し、横浜FCはわずか3本。そのうち、途中出場の伊藤が唯一放ったシュートをゴールに沈めている。もちろん、どのチーム、選手も、点を取る難しさに変わりはないが、点を取る"確率"で考えるなら、1試合のなかでより多くのシュートチャンスを見出せるほうがいいというのは当然の論理だろう。
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