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37歳・伊藤翔が追求する"やりがい"「横浜FCが今季、J1に残留できるかどうかは大きなターニングポイントになる」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 それは37歳になった今シーズンも、だ。三浦文丈監督就任後は前編で記したヴィッセル神戸戦を含めて、メンバー入りする時間も増え、第31節のファジアーノ岡山戦ではシーズンで初めてリーグ戦に先発出場。神戸戦後に三浦監督が話した伊藤評を聞いても、ベテランとして、FWとしての存在感は今も色褪せていない。

「(伊藤)翔はここまでなかなかチャンスが与えられないなかでも、ふだんの練習から決めるべきところで決めるという姿をしっかりと示してくれていました。ルキアン、アダイウトン、ジョアン・パウロ、櫻川ソロモンというFW陣のなかでも、翔が一番ボックス内のクオリティが高いと思っています。

 今日も、彼のところまでボールがしっかり入ってきさえすれば、翔が真ん中でしっかり決めてくれるだろうと信じて起用しましたが、まさにそのとおりの姿を示してくれました」(三浦監督)

 そうしたコンディションのよさも示しながら戦いを進めてきたなかで、彼はなぜ今のキャリアを"ボーナスステージ"と表現するのか。これは彼がプロになった時から「35歳くらいまで現役をできれば御の字だと思っていた」ことが理由だという。

「僕がプロになった時は先輩たちに『10年やれれば一人前だ』と言われていました。でも、19歳から10年となると29歳ですからね。いやいや、もうちょっとできるんじゃない? と思って自分なりに目標を『35歳』に設定したんです。ただ、キャリアが進むにつれ、それが決して簡単ではないということも痛感してきました。

 実際、プロの世界は、自分がプレーしたいというだけではなく、クラブからも求められる選手でいなければいけない。それを思っても、こうして37歳になった僕を横浜FCというクラブに必要としていただいているなんて、キャリアの"ボーナス"としか思えないくらい幸せなことだとも思う。

 そう考えても、35歳を超えてからはずっと"ボーナスステージ"だと受け止め、いつ辞めても悔いはないという過ごし方、マインドでサッカーと向き合ってきました。裏を返せば、いつ辞めてもいいのになぜ今も続けているんだ? となると思いますが(笑)、そこは"やりがい"かな。35歳をすぎて、そこはより自分に求めるようになった気がします」

 では、彼の言う"やりがい"とは何なのか。クラブから求められる選手であることは前提にあるとして、彼自身は今、何を思い、ボールを蹴っているのか。

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