検索

【Jリーグ】野々村芳和チェアマンがJリーガーの海外移籍に思うこと「クラブがビジネスとして扱うべき」 (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei

【このままでは世界に後れを取る】

 Jリーグは2025-26シーズンから、現行シーズンからヨーロッパと同じ秋開催・春終了のシーズンへ移行する(※Jリーグは「秋春制」という表現はしていない)。選手の国際移籍は、これまでよりもさらに活発となる。シーズン移行をきっかけに、日本人選手をその実力にふさわしい金額で移籍させ、クラブが収入を増やすという健全な仕組みを加速させていくべきなのだ。

「ドメスティックなエンターテインメント産業なら、外との付き合い方をそこまで意識しなくてもいいかもしれない。けれど、世界のマーケット入りを目指すなら、このままでは後れを取るばかりだというのは共通認識となっています。

 先のクラブワールドカップの出場クラブで言うと、浦和レッズの2024年シーズンの売上高は102億円。これはJリーグでもっとも多い数字です。パリ・サンジェルマンは2023-24シーズンの売上高が1300億円。優勝したチェルシーは900億円です。

 クラブの収益を大きくしていきたいのだから、選手の移籍は個人の目標や夢を叶える機会にとどまらず、クラブがビジネスとして扱うべきです。クラブの強化担当者も、そういう意識を強くしています。自分たちの選手の価値を評価して、『この金額より下では出さない』いうような物差しを持てるようになってきていると感じますね」

 各クラブが増収増益で経営規模を大きくしていけば、選手との契約も変わってくるのではないだろうか。

 現在のJリーグでは、長期契約は例外的だ。たとえば、18歳の選手と年俸5000万円の5年契約を結ぶ、といったケースが普通になれば、ヨーロッパの中堅国への移籍が減るかもしれない。Jリーグで稼ぎながら実力をつけ、5大リーグへ挑戦するケースが増える、との期待感を抱くことができる。20歳で移籍することになっても、契約期間内なのでしっかりと移籍金を得ることができる。

「クラブ経営の方向性はさまざまありますから、『ウチは(選手を)買って勝つ』というクラブがあってもいいでしょう。ヨーロッパにも目の前のタイトルをとにかく取りにいくという発想で、実績や経験のある選手を揃えるチームがある。リーグ内でクラブごとの『色』がもう少しはっきり見えてくると、ビッグクラブと呼ばれるクラブが出てくる土壌が育ちます」

2 / 4

キーワード

このページのトップに戻る