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【Jリーグ】横浜F・マリノスの苦悩の根深さを分析 相次ぐ指揮官交代、エースの反乱、そして最下位へ... (3ページ目)

  • 取材・文●舩木渉 text by Funaki Wataru

クラブ史上初、1シーズンに二度目の監督交代

 チーム内に不協和音が鳴り響くなかで、監督交代直後には選手や現場スタッフだけでなく強化部スタッフも全員が参加したミーティングが開かれた。そのなかで、ある選手が「同じようなシチュエーションでの失敗を何度も繰り返して、それが何試合もやってきてまったく改善されないのは、どう考えてもおかしい」と声を上げた。
 
 今季に入ってから出場機会に恵まれない選手のひとりではあったが、自らの立場に不満があるのではなく、心からチームのことを思っての行動だった。本来ならミーティングの内容などは表に出るものではないが、その選手は「明らかに改善されていないものを提示し続けるのは、僕は違うと思ったので」と筆者に打ち明けてくれた。6月上旬のある日の練習後のことだ。
 
 ACLEファイナルズから戻った後も、状況は好転しない。暫定指揮官だったキスノーボコーチは監督に昇格したものの、監督交代の前後で公式戦8連敗と負の連鎖を断ち切れずにいた。浦和に敗れたことでマリノスは最下位に転落し、残留圏内の17位との勝ち点差はどんどん開いていく。
 
 相変わらず攻撃は不発で、ACLEファイナルズ後のリーグ戦3試合は無得点6失点での3連敗。チーム状態がどん底まで沈み込むなか、キスノーボ監督は5月21日のJ1第13節延期分・ヴィッセル神戸戦でスタイルの転換を図った。
 
 システムこそ同じだが、それまでとは異なり、前線から激しくプレッシャーをかけて、ボールを奪えばロングボールも多用して、効果的な速攻を披露。マリノスは1-2で敗れたものの、縦方向にダイレクトなサッカーを持ち味とする神戸と真正面からやり合い、多くのチャンスを作ったことで改善への確かな手応えを得た。キスノーボ監督も「今夜は今シーズンのベストゲームができた」と満足げだった。
 
 その後、同じアプローチで戦ったJ1第18節の鹿島アントラーズ戦、同19節のFC町田ゼルビア戦で今季初のリーグ戦連勝を達成。2試合で6得点1失点と課題だった攻撃力を取り戻し、ともに強度の高さを武器とする上位陣から奪った連勝で、浮上のきっかけをつかんだように見えた。先に引用したミーティングでの出来事について聞いたのは、町田に勝って好転の兆しが現れ始めた頃のことだった。
 
 だが、現実はそう甘くはなかった。6月11日に行なわれた天皇杯2回戦で3カテゴリー下のラインメール青森に内容乏しく0-2で敗れると、再び歯車が狂い始める。そして、続く6月15日のJ1第20節アルビレックス新潟戦を0-1で落とした直後、キスノーボ監督は職を解かれた。
 
 シーズン中に2度目の監督交代というのは、一度も降格を経験していないマリノスにとって前代未聞の事態。最下位から抜け出せぬまま約2カ月が経過し、一体これからどうなっていくのかと不安ばかりが募っていく。
 
「マリノス、大丈夫?」という問いにも、「大丈夫じゃないから......とも言っていられないくらいやばい」としか答えられなくなっていた。

(つづく)
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