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キングカズが現役でいてくれる幸せ 田原俊彦ダンス、永島昭浩とのハグ...「楽しくなければサッカーじゃない」 (2ページ目)

  • ヤナガワゴーッ!●取材・文 text by Yanagawa Go!

【待ってました、カズダンス!】

 直後の攻撃。ピッチ中央でボールを持ち、一瞬のタメからのエラシコで対面した朴康造(パク・カンジョ)を抜き、右足アウトサイドでチョップ気味にパス。右横にいた田中英雄がその浮き玉を絶妙のワンタッチでフリースペースへ流すと、そこに走り込んだカズが右足で一閃を放つ。ボールは惜しくもバーを越えたが、この日の主役が誰なのかを知らしめるに十分な一発だった。

 30分ハーフの10分で予定どおりの全員交代。ベンチでは目立たない2列目で戦況を見守る。昔から自身の「出番」以外は控え目だ。

 後半は最新ユニフォームに着替えた。カズは軽快にピッチを走り回る。ドリブルからのシザース、サイドに配球、プレーする楽しさがレンズ越しにも伝わってくる。左腕からずり落ちてしまったキャプテンマークは手に握ったままだ。

カズと一緒にキメポーズをしようと集まるも... photo by ©️ヤナガワゴーッ!カズと一緒にキメポーズをしようと集まるも... photo by ©️ヤナガワゴーッ!この記事に関連する写真を見る 後半9分、岡野雅行がペナルティエリア内で倒されてPKを演出。

「起き上がったら槙野(智章)が『カズさんで』って言うので。そりゃそうだと思いました」(岡野)

 淡々とペナルティマークにボールを置くカズ。「持っている」とは知っていたけど、今日この場面で来るか! コーナーフラッグの外まで下がってカメラを構える手に思わずチカラが入る。そして朝飯前のようにゴールを決めて、こちらに向かってくるカズ。

 来たぁ! 待ってました! カズダンス!

 本来ならチームが負けている時はやらないのだが、今日は古巣ヴィッセル神戸30周年チャリティーマッチだ。しかし、タッチライン付近まで来るはずが、なぜかすぐに走りをやめてクルリと背中を向けると、両手を広げてキメポーズ! ええっ、あ、もしかして、田原俊彦の完コピダンス!

 一緒にキメポーズを取りたくて集まってきた朴康造も、槙野智章も、野人・岡野も明らかに戸惑っているのがわかる。そんなことお構いなしに、いつもどおりの(カラオケでやっているという)トシさんダンスをやり遂げた。

 外れたキャプテンマークは変わらず左手に握ったままだ。そのままコーナーキックも蹴った。交代する時は永島昭浩の腕に、まるで神聖な儀式のようにキャプテンマークを丁寧に巻きつけて、そしてハグ。美しいシーンだ。

 18,515人の観衆がなにを望んでいるのか、この男にはわかっているのだ。

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