ケガに泣かされ続けた山田直輝「サッカーがうまけりゃいいんでしょ的なダメ人間」はこうして変わった (3ページ目)
なのに、最後の最後で苦しさを覚えるようになって......だから"引退"を覚悟したんだと思います。結局は、家族の言葉に助けられてまた心に火がついちゃったんですけど」
そうして現役続行を決断した彼は今、岐阜の地で、その熱のままに新たなチャレンジに向き合っている。クラブの目指すビジョンのもと、仲間とともに全力で目標に向かって突き進み、自分のすべてを注いで全力で戦い抜く。キャリアで育んできた、そのアイデンティティを際立たせて。
「今はとにかく、このチームが上に上がっていくのを一緒に見続けたいってことが、僕のすべてです。また、今年はキャリアで初めてキャプテンにも選んでいただいたなかで、いろんな試行錯誤をしながらも、また人として成長できそうだな、キャプテンって面白いなと思っている自分もいます。これまで見てきたいろんなキャプテンのことを、あらためてすごかったんだなってリスペクトし直すくらい、考えることは多いですけど」
とはいえ、それを重荷に感じることはない。キャプテンという責務と真剣に向き合うことも、サッカーの楽しさに含まれているからだ。
「僕にとっての"楽しさ"は、サッカーに本気で向き合うこと。キャプテンも、その"本気"に含まれるので負担に感じることはないです。むしろ将来は指導者になりたいと思っているからこそ、すごくいい経験になっています。
監督と選手の間に立って、監督がどんなサッカーを志向しているのかをチームメイトに伝えたり、選手が感じていることを吸い上げて、監督と意見を交わしたり。そのなかでは、自分がよかれと思って行動したことが、チームメイトには真逆に見えていることもあると学んだり。それが監督の気持ちを知ることにつながったり。
まだ数カ月とはいえ、そうした時間を過ごすうちに、これまでとは違うサッカーの見方や考え方ができるようにもなった。もちろん初めてのことで悩む時もありますけど、それも含めてすごく充実しています」
そんなふうに考えられるのも、おそらくは"新しい山田直輝"を手に入れたから。キャリアで直面したたくさんのケガが、そのキャリアを揺るがすほどに彼を苦しめてきたのは事実だが、それによって新たに備えた財産は今、彼のなかで強く息づいている。
「もちろん、ケガをしないに越したことはないし、浦和でのケガがなく、挫折もせずにサッカーをしていたら、もしかしたらプロサッカー選手としてのピークはもっと高いところにあったかもしれない。でも一方で、こんなにも長くサッカー選手でいることはできなかったと思います。ケガなく順調にキャリアを重ねていたら、きっと歳を取るほどチームに求められづらいベテランになっていた気もしますしね。
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