日本で、世界で最もサッカーが見やすいスタジアムは? ポイントは「俯瞰的に」見えるかどうか
連載第40回
サッカー観戦7000試合超! 後藤健生の「来た、観た、蹴った」
なんと現場観戦7000試合を超えるサッカージャーナリストの後藤健生氏が、豊富な取材経験からサッカーの歴史、文化、エピソードを綴ります。
今回は、「サッカーが見やすいスタジアム」について。後藤氏が感じる日本で最も見やすいスタジアムはどこか? そしてこれまで世界で体験した「究極の観戦環境」を紹介します。
アルゼンチンのスタジアム、ラ・ボンボネーラ photo by Getty Imagesこの記事に関連する写真を見る
【ピッチ全体を見られない席は困る】
「悪夢」というものがある。
電車やバスが遅れたり、乗り継げなかったりして約束の時間にどうしても間に合わないとか、道に迷って同じところをグルグル回って目的地にたどり着けないといった、いや~な夢のことだ。スマホの画面をタッチしてもちゃんと反応してくれないとかいうのは、最近出現した新しいバージョンだろう。
僕がよく見る「悪夢」には、こんなのもある。
スタジアムで席に座ったのだが、壁とか床とか照明装置などが邪魔でピッチがよく見えないのだ。スタジアム内をあちこち移動して席を探すのだが、ちゃんと試合が見える席がどこにもない。そうこうしているうちに試合が始まってしまった。でも、まだまだ僕はウロウロしている......。
本当にしょっちゅうこういう夢を見る。
実際に、そういう目に遭ったこともある。
なでしこリーグ(日本女子サッカーリーグ)の強豪「伊賀FCくノ一三重」の試合を見に、三重県伊賀市の上野運動公園競技場に行った時のことだ。
メインスタンド中央に本部用の大きな建物があるので、スタンドの北側に座ると南側のコーナー付近が死角になってしまう。逆に、南側に座ったら北側が見えない。
夢の時と同じように僕はピッチ全体を見ることができる席を探し続けた。本部の建物の左右にバルコニーみたいな席があって、そのうちの席の一部からはピッチ全体が見えることをようやく発見したのは試合開始直前だった。
運営者側にとっては使い勝手がいいのかもしれないが、入場料を払った観戦者のことをまったく考えていない。いったい誰がこんなスタンドを設計したのだろう?
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著者プロフィール
後藤健生 (ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2025年、生涯観戦試合数は7500試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。