Jリーグシーズン移行で冬の試合は増加? 寒さのなかのサッカー観戦で思い出す出来事 (3ページ目)
【悪コンディションもものともしない選手たち】
気温が氷点下に下がると、芝生や地中、ボールの水分が凍結しはじめ、ボールの挙動がおかしくなってくる。もちろん、寒さで体もうまく動かず、プレーに大きく影響する。さらに雪が積もったりしたら、ボールは動かなくなってしまう。
本田圭佑がCSKAモスクワでプレーしていた頃、僕はジェイスポーツでロシアリーグの解説をしていた。ロシアだから氷点下あるいは雪中の試合も何度かあって、当然、うまくプレーできない選手もたくさんいた。
そんななかで、CSKAのアーメド・ムサ(のちにレスター・シティなどでもプレー。ナイジェリア代表)は雪のなかでも普段とほとんど変わりなくプレーできていた。ムサの出身地ジョスはナイジェリア北東部の高原地帯だからそれほど暑くはないが、しかし、赤道に近いナイジェリアでは氷点下も降雪も経験できないはずだ。
そんなナイジェリア人選手が、寒さに慣れているロシアや東欧の選手よりうまく雪中でプレーしていたのだ。やはり、人種とか出身地ではなく、個人差の問題なのだろう。
そう言えば、2021年1月に行なわれた全日本大学女子サッカー選手権決勝も雪に見舞われた。13時のキックオフとほぼ同時に振り始めた雪は後半になるとますます激しくなり、味の素フィールド西が丘のピッチはたちまち真っ白に。後半の途中には「雪かきタイム」の中断まであった。
当然、選手たちはうまくプレーができなくなってしまう。
すると、早稲田大学の選手のひとりがボールを浮かせながらドリブルし、浮き球のパスを使ってプレーしてみせた。そして、他の選手もそれを真似てプレーしはじめ、早稲田大学は静岡産業大学を圧倒(シュート数は19本対2本)。後藤若葉(現浦和レッズレディース)の得点で優勝を決めた。
できれば、こんなコンディションでの試合は避けたいものだが、それでもプレーする方法を工夫する姿勢や基本テクニックは大事なのだ。
地球温暖化の影響で、これからも今年のように降雪量が増える可能性がある(日本海の海水温が上がると水蒸気量が増えて雪が多くなる)。Jリーグは2026年から秋春制に移行することになっているが、ウィンターブレークの時期をどのように設定するのか、慎重に検討してほしいものだ。
著者プロフィール
後藤健生 (ごとう・たけお)
1952年、東京都生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。1964年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、1974年西ドイツW杯以来ワールドカップはすべて現地観戦。カタール大会では29試合を観戦した。2022年12月に生涯観戦試合数は7000試合を超えた。主な著書に『日本サッカー史――日本代表の90年』(2007年、双葉社)、『国立競技場の100年――明治神宮外苑から見る日本の近代スポーツ』(2013年、ミネルヴァ書房)、『森保ジャパン 世界で勝つための条件―日本代表監督論』(2019年、NHK出版新書)など。
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