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梅崎司(大分トリニータ)は引退するか現役続行するか迷っていた きっかけは曺貴裁監督の「心に刺さる言葉」 (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke

【ここで選手として終わることができれば...】

── 限られた時間のなかで、家族にはどのように伝えたのでしょうか?

「妻は、僕の意見に賛同してくれました。ここ数年、選手を続けながらもケガが多く、どこかつらそうに見えていたと言ってくれました。僕が次のステージに進んだ時の姿が見えると言ってくれ、自分がやりたい道に進めばいいと背中を押してくれました。

 ただ、11歳になった娘だけは『パパ、やめないで』『絶対にまだできる』と言っていたので、その時だけは『もう一度、選手として輝いている姿を見せなければ』と思って、迷いましたけどね。最終的に『それでもパパは次に進むよ』と話したら、納得してくれました」

── 2021年7月に大分に復帰して3年半。ユース時代から過ごし、プロのキャリアをスタートさせたクラブで、選手を終えられることも特別だったのではないでしょうか?

「その感謝は、言葉では言い表せないですね。おそらく、多くの選手がそうした終わり方を望んでいると思うのですが、みんながみんな、そうしたキャリアの終わり方を迎えられるわけではないので。

 大分から復帰のお話をいただいたのが34歳。間違いなく選手としてのキャリアが終盤に差しかかっているタイミングでした。湘南ではその年、J1リーグで2試合しか出場機会がなく、それでも大分が自分の復帰を望んでくれたことは、本当に幸せでした。

 その2021年は、大分でも4試合しか出場できませんでしたが、翌2022年は復活というか、もう一度、自分のプレーを見せられた感覚もあったし、チームメイトとも、ファン・サポーターとも喜びを分かち合えた思いがありました。だから、なんだろうな......ここで選手として終わることができれば、という思いも大きかった」

── ホーム最終戦後に行なわれた引退セレモニーを見ても、その後のファン・サポーターとの交流を見ても、大分で愛されていたことが伝わってきました。

「自分自身で復活できたと感じている2022年は、湘南時代とはまた違った形で、チームの中心として関われている感覚がありました。それは、いち選手としてだけではなく、2023年にはキャプテンもやらせてもらいましたし、大分でそうした存在になれたことがうれしかったですね。

 ファン・サポーターの皆さんも、僕に対してプレーだけではない何かを期待してくれているのも感じていたので、自分が育ったクラブでそうした経験ができたことは、自分のなかでも本当に大きかった」

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