Jリーグでプロ入り10年のキム・ミンテ「自分を映画の主人公だと思って生きている」 (5ページ目)
【日本人と同じように日本語を扱う外国人】
そんな役割を果たせるのも、10年間の日々での紆余曲折を経て習得した日本語があってこのとだ。日本人プレーヤーと同じように日本語を扱う外国人。おそらくはこの点は、Jリーグの歴史のなかで、韓国人プレーヤーたちが長けている点のひとつだ。言語的特徴が近いため、日本語をマスターしやすい。
「基本的に本気なんです」とキム・ミンテは語る photo by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る 最後にキム・ミンテに聞いてみた。日本語の実力は本当にすごいが、あなたは外国籍選手です。日本人とは違う特徴が求められる。そのなかで「韓国人ならでは」という点はありますか、と。
「韓国人だからかどうかはわからないんですが......基本的に本気なんですよね。ちょっと気持ち悪いかもしれないけど、自分の人生を本当に映画の主人公だと思って生きているんですよ。"俺様"みたいな感じではないですけど、俺が中心で。だから『この1試合がもし映画に出るならどうなるだろう』って考えたりもします。必死だ、熱いという要素はそういった考え方から出てきていますね」
筆者は25年来、幾多のコリアンJリーガーに話を聞いてきたが、自然とインタビュー中の会話が韓国語から日本語に切り替わったのは彼が初めてだった。
そんなキム・ミンテの話を直接聞いて、日本の立場からこんなことを思った。
Jリーグができて32年。その歴史の重みがここにでもあるのではないか。幾多の国のプレーヤーがやってきて、自分の確固たる考えがあれば、自分なりのストーリーを描ける場になっている。Jリーグがそんな受け皿になっているのは、すごく誇らしいことじゃないか、と。
(おわり)
キム・ミンテ
金眠泰/1993年11月26日生まれ。韓国仁川広域市出身。MF/DF。光云大学から2015年にベガルタ仙台に加入。2017年から北海道コンサドーレ札幌、2021年途中から名古屋グランパス、2022年から鹿島アントラーズ、2023年途中から湘南ベルマーレでプレー。今季J1通算200試合出場を果たした。U-23韓国代表としてリオ五輪を経験している。
著者プロフィール
吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)
ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。
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