国立競技場での名古屋グランパスの「敗れ方」に、アピールに失敗するJリーグの姿を見た (3ページ目)
【面白い試合を披露する気概】
同じことは8月24日に国立競技場で横浜F・マリノスと対戦したセレッソ大阪についてもあてはまる。4バックではあるが、目一杯引いて構えたC大阪が横浜FMに0-4で敗れた一戦だ。見られているという意識が低いサッカー。出し物を披露する感覚に乏しいサッカーとも言える。ただ単に勝ち負けにこだわるサッカーをして大敗する姿が、名古屋同様、白日のもとに晒される格好になったのだった。見過ごすわけにはいかない。
国立競技場での試合には、NHKの総合放送で放送される試合と同じ意味がある。BSではない。限られた人しか視聴することができない有料の配信サービスでもない。
国立競技場で試合をするチームは、世間の目を気にしてほしいものである。サッカー人気に大きな影響を与える一戦だとの自覚で臨んでほしい。勝ち負けも大切だが、それ以上に面白い試合を披露する気概が不可欠となる。
今週から新装なった新シーズンが始まっているチャンピオンズリーグがなぜここまで発展したか。攻撃的サッカーが守備的サッカーを凌駕してきたからである。面白いサッカーをすることを心がけた監督の絶対数が、そうではない監督を大きく上回ったからである。
森保一日本代表監督もそうだが、日本には面白いサッカー、魅力的なサッカーを口にする監督、指導者はごく僅かだ。予備軍であるテレビ解説者もしかり。そこに価値を見出している人は少ない。サッカーを娯楽、エンタメと捉えたことがない元サッカー選手には理解できない感覚なのかもしれない。
国立競技場が「聖地」と言われる所以は、どのスタジアムよりサッカー好きが集まる環境が整っているからだ。彼らの存在を無視すれば、日本サッカーの普及発展はない。国立競技場でプレーするチームは御前試合に臨むような覚悟がほしいものである。もちろん日本代表を含めて、サッカー人気に大きな影響を与える試合だからだ。
著者プロフィール
杉山茂樹 (すぎやましげき)
スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。
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