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国立競技場での名古屋グランパスの「敗れ方」に、アピールに失敗するJリーグの姿を見た (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【国立競技場は「宣伝」の場】

 今季これまで国立競技場で行なわれたJ1リーグ11試合の平均入場者は5万人強。選挙は無党派層の行方がカギを握ると言われるが、国立競技場にはそれと似た傾向にある人たちが毎度2万人近く訪れる。彼らの心をいかにつかむかは、サッカーの普及発展のカギでもある。特にFC東京のファンでも名古屋のファンでもないが、サッカーは好きという人たちである。

 各本拠地のスタジアムは、チームの順位が多少落ちようが、ほぼ変わりなく埋まる。川崎フロンターレの本拠地、等々力がいい例だ。チームは2、3年前と別人かと言いたくなるほど低迷しているが、観客数は微減に留まっている。パッと見、スタンドの様子に変化はない。Jリーグのスタンドはどこもこうした固定客で占められる。どの現場も盛況に見える。

 しかし、だからといってサッカーファンが増加しているとは限らない。むしろ伸び悩んでいるのではないか。8、9割程度しか埋まらなかった日本代表の中国戦(9月5日)のスタンド風景(埼玉スタジアム)見ていると、そう思わざるを得ない。

 だとすれば、原因はどこにあるか。

 FC東京対名古屋に話を戻せば、結果は4-1でFC東京の一方的な勝利に終わった。目立ったのはFC東京の強さというより、名古屋の不甲斐なさだった。5バックで守りを固める典型的な守備的サッカーであるにもかかわらず、次々に失点を重ねる姿は、論理が破綻している典型だと言わざるを得ない。

 5割を占めたFC東京のファンは楽しめただろう。15%を占めた名古屋のファンは悲しかっただろう。残る中立ファン35%は、果たしてどうだっただろうか。後ろを固める名古屋の守備的サッカーを恨めしく思ったに違いない。片方が一方的に攻め、得点を重ねていく姿、片方が一方的に守り、失点を重ねていく姿に、物足りなさを覚えたに違いない。

 その原因が名古屋にあることは明白だった。つまり名古屋は自らの魅力を宣伝することに失敗した。国立競技場は宣伝には最適な舞台なのである。ふだん、豊田スタジアムに訪れることがない2万人の心をつかみ損ねることになったという事実に、クラブ関係者は気づいているだろうか。

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