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田中聡の理想像は湘南の先輩・遠藤航 アンカーとして殻を破るためのカギは『お前からチームに発信しろ』 (4ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke

【山口智監督から与えられた新たな課題】

 わずか1年の欧州挑戦だったが、異なる文化、サッカー、メンタルの在り方に触れた経験は無駄ではないだろう。成長曲線によっては、再び挑戦する機会を掴みとれる21歳である。

 何より、欧州で揉まれてベルマーレに復帰してからは、確実に意識は変わっている。

「戻ってきてからはシュート。ゴールに直結するプレーが少ないと感じて、そこに取り組んできました。それでも昨季は得点を決めることもできなければ、アシストもできなかったので、さらにたくさん練習した結果が、今季のプレーにつながっているのかなと思っています」

 精神的にたくましくなった田中は、次なる成長段階へと進んでいる。それを見越す山口智監督からは、さらに殻を破るための課題をぶつけられている。

「お前からチームに発信しろ」

 アンカーとして、守備ではどのようにチームとして対応し、攻撃ではチームとしてどう崩していくかを示すために、プレーだけではなく声で、言葉で、導くように求められている。

「以前は、本当に何もしゃべっていないくらい、試合中に声を出すことはなかったのですが、今は少しずつですけど、近いところにいる選手たちには、自分の考えや指示を伝えるようにしています。

 感情的に話したり、熱い口調で伝えたりすることは、性格的にできない。なので、そこはキャプテンの(キム・)ミンテさんや(鈴木)雄斗くんに任せて、自分は冷静に伝えていければ。でも、自分がもう一歩、上のレベルに行くために、どうしたいかを伝えていく行動は必要なことだと思っています」

 今季、後方から熱い言葉で、チームに発破をかけてきたキャプテンのキム・ミンテは、負傷により離脱中だ。なおさら、チームの中央でどっしりと構える田中のプレーと指示が、チームの明暗を握っている。

 田中もまた、チームのためにそこに挑もうとしている。

「かつてのように今は、精神的に弱気になったりすることもなくなり、ブレや波もなくなりました。何より、隠れていないですからね(笑)」

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