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田中聡の理想像は湘南の先輩・遠藤航 アンカーとして殻を破るためのカギは『お前からチームに発信しろ』 (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke

【調子がいい時は何も考えなくなる】

 田中は、「本来はあってはならないこと、してはいけない考え」とも前置きした。

「リーグ再開後、自分が出場したのは名古屋戦(第24節)ですが、うしろからのパスも積極的に受けて、ミスも何度かしましたが、ミスを気にすることもなくなりました。その勢いのまま、いいプレーが続けられて、シーズン終了まで駆け抜けることができました」

 そして、言う。

「そこで、メンタルの大切さに気づいたんです」

 心の充実は、プレーにもプラスに作用した。

「調子がいい時は、自然と顔が上がるので、視野も広くなって、効果的なパスが出せるんですよね。それに調子がいい時は、自分の調子がいいとか、悪いとかすら考えなくなるんです」

 プロ1年目の2021年にJ1リーグで36試合に出場した田中は、翌夏にKVコルトレイク(ベルギー)に期限付き移籍する。ヨーロッパでも実感したのは、メンタルの強さだった。

「加入した当初は試合に起用してもらっていたのですが、シーズン途中から試合に出られなくなり、出場機会を得られないまま、1年でベルマーレに帰ってきました」

 なぜと、その理由を自身がどうとらえているのかを聞いた。「やっぱりメンタルです」と、苦笑いを浮かべながら即答する。

「純粋に自分のプレーが出せなくなっていきました。加入した当初はできていたプレーができなくなり、試合に出られなくなると、さらにヤバイと思って、本来のプレーを見失ってしまって」

 自身にとって初のヨーロッパでは、強靭な精神力を持つ選手たちのなかで揉まれた。

「コルトレイクは規模としては小さなクラブだったので、ベルギー以外の国籍の選手もいれば、日本でいう大学生のような選手もいて、実力差もバラバラでした。それでも、それぞれに野心があって、だからたとえ自分がミスをしたとしても、自分の非を認めないくらいの強さを持っていました。何があっても這い上がってやると思っている選手に競り勝っていくには、なおさら強いメンタルが必要だなって感じました」

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