ガラっと変わったJリーグ勢力図を分析 福田正博「共通点は縦に速く、強度の高いサッカー」 (3ページ目)

  • text by Tsugane Ichiro

【縦に速いシンプルなサッカーの神戸と鹿島】

 その町田と首位争いをしている昨シーズンの覇者ヴィッセル神戸も、自分たちのストロングポイントを生かして、相手ゴール前へとシンプルに迫るサッカーで勝ち点を伸ばしている。1トップの大迫勇也にボールを預け、彼の個の力でタメができる間に味方が攻め上がる。大迫がいることで、武藤嘉紀、佐々木大樹や汰木康也などのアタッカーが躍動している。

 この神戸の戦い方は、本質的な部分では町田のサッカーと同じと言えるだろう。ボールを奪ったら、チームが持つ高い個人能力を最大限に活用して、素早く相手陣に攻め上がるからだ。

 神戸には、優勝経験のある選手たちが数多く揃う強みがある。その一方で、不安要素はリーグの優勝争いが佳境を迎える9月から予定されている「ACLエリート2024-25」が始まることだ。上位クラブの宿命とはいえ、試合数が増えれば、おのずとリーグ戦に影響が出る可能性は高まる。それだけに、神戸としては9月までにライバルに対して多くの勝ち点差をつけておけるかが、2連覇へのポイントになるだろう。

 3位につける鹿島アントラーズも、新監督ランコ・ポポヴィッチのもとで縦に速く強度の高いサッカーで勝ち点を積み上げている。サイドバックがアグレッシブにボールを奪いに行き、中央の守備も堅くて強い。ただし、このサッカーをシーズン終盤まで維持できるかは、未知数の部分がある。

 現時点でポポヴィッチ監督は、町田の黒田監督と同様に現実主義的な戦い方を志向している。しかし、ポポヴィッチ監督がこれまで率いてきたJリーグでの指導経験を振り返れば、監督の理想とするサッカーが別にあるように感じる。それだけに、最後の最後まで「勝利」だけを追い求めることができるのか。それとも「内容」にもこだわりを見せるのか。そこがリーグ優勝への分岐点になる気がする。

 中盤戦から後半戦に向けて注目しているのが、FC東京だ。序盤戦は、パリ五輪出場を決めたU-23日本代表で躍動した松木玖生と荒木遼太郎がチームを支えたが、彼らが五輪予選で不在の間に戦力が整い、戦い方のバリエーションが豊富になった。松木、荒木とも5月中旬からFC東京に戻ってきたが、それ以前までスタメンを張っていた選手たちもパフォーマンスがよかった。それだけに、コンディションと調子のいい選手を優先して使いながら、チームの勢いを保っていくのではないかと見ている。

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