ヴィッセル神戸・武藤嘉紀、今だから明かせる優勝秘話 肺挫傷の大ケガ→ドクターストップの可能性も「是が非でもピッチに立ちたい」 (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa

 そのための準備も着々と進んでいる。以前から練習前後のケアにも余念がない武藤だが、今年はそれにもまして新たな取り組みも。チームメイトの大迫勇也に紹介してもらったという「脳と目を鍛えるトレーニング」だ。沖縄キャンプ中も練習が終わったあとに、ひとりサングラスのようなものをつけて、自主トレに励む姿を見かけた。

「簡単に説明すると、効き目だけではなく、両目をしっかり使えるようになることで、バランス感覚を鍛えるのが目的です。というのも、僕は右利きなのに、利き目が左で......。これまで右目をあまりうまく使えていなかったらしいんです。

 それもあって、右足一本で立つのと、左足一本で立つのでは、明らかに左足のフラつきが大きく......。右足でシュートを打つ際も軸足がしっかり踏み込めていないせいで、シュートの威力が弱くなってしまっている、と。なので、今はその右目をうまく使えるようになるためのトレーニングを続けています。

 いやぁ、この年齢になっても、自分の体を100%で生かせていなかったんだと知れて、『まだまだ成長できるな』『伸びしろがあるな』ってワクワクしかないです(笑)!」

 そうして、よりいい状態の"自分"でいることが、プロサッカー選手としての時間を1日でも長く楽しむことにつながるからこそだ。

「今の時代は、ケアやトレーニングの進化にも助けられながら、本当に真摯に自分の体と向き合って、サッカーに注いでプレーしている30代の選手がすごく増えた。正直、僕がヴィッセルに加入した時は、僕よりトレーニングをしている選手はいないだろうなと思っていたのに、そんなことは全然なくて。大迫選手、山口蛍選手、酒井高徳選手らは、とにかくトレーニングもするし、ケアも怠らない。

 そういう姿に刺激を受けて、僕もよりケアを徹底するようになったし、トレーニングも......やりすぎはよくないけど、やらないと動けないよなって自覚していろんなチャレンジを続けられている。実際この歳になると、本当に1年1年が勝負で、仮に大きなケガでもしてしまったら、チームから『いらないよ』と言われてしまう年齢でもあるので。そういう意味でも、昨年と同様に、今年も1年を通してケガなく、いいパフォーマンスを継続したいと思っています」

 涼しい顔で話した武藤だが、実は昨年終盤の浦和レッズ戦(第32節)後に肺挫傷の大ケガを負い、優勝を決めた第33節の名古屋戦を含めて残り2試合は出場が危ぶまれたという裏話も。今だから明かせることだと教えてくれた。

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