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冨安健洋の「底が割れていない」可能性 欧州で広げたプレーの幅

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

Jリーグから始まった欧州への道(4)~冨安健洋

 森保一監督については、日本代表の監督であるため、やむなく厳しめに書かせていただくことが多いが、けっして多いとは言えないヒットのなかで、無条件に称賛したくなるのが冨安健洋の登用だ。

 初招集は2018年9月で、デビューは10月に新潟で行なわれたパナマ戦だった。4-2-3-1のセンターバック(CB)として、槙野智章とコンビを組んで出場した。

 1998年11月5日生まれ。当時まだ19歳だった。2018年1月、アビスパ福岡から移籍したシント・トロイデンでは、そのシーズンの終盤、出場を果たしていた。チームメイトとなった遠藤航より優勢な立場に立っていたほどだ。そういう意味では代表招集は当然と言えるが、早い段階でスタメンとして起用したことが、森保監督の見る目を評価したくなるポイントだ。

 Jリーグデビューは17歳で迎えた2016年シーズン。J1で最下位に終わったアビスパ福岡で10試合に出場(うち9試合が先発)した。翌シーズンはJ2で35試合に先発フル出場を果たす。1シーズン目は守備的MFとしての出場が多かったが、2シーズン目はCBが中心だった。

アビスパ福岡時代の冨安健洋(アーセナル)photo by Fujita Masatoアビスパ福岡時代の冨安健洋(アーセナル)photo by Fujita Masatoこの記事に関連する写真を見る UAEで開催された2019年アジアカップでは、初戦のトルクメニスタン戦に4-2-3-1の守備的MFとしてスタメン出場したのを皮切りに、7試合すべてに出場。全選手のなかで最も長い時間、ピッチに立った。20歳になったばかりの選手が、だ。2戦目以降のポジションはCBだった。CBか守備的MFか。ポジションは2択で、前者が多めだった。

 アビスパ福岡時代に185センチと表記されていた身長は187センチに伸びていた。

 2011年のアジアカップでは、台頭した当時22歳の吉田麻也に対して、ボールさばきの上手な大型CBがようやく日本に現れたと、目を細めたものだ。だが、その8年後に登場した冨安を見た時の感激は、その比ではなかった。日本サッカーの進歩を、吉田と冨安の差に見ることができた。

 1シーズン半(2017-18、2018-19)プレーしたシント・トロイデンではもっぱら3バックの一角としてプレーしたが、2019-20シーズンに移籍したセリエAの中堅クラブ、ボローニャでは、4バックのSBとして出場機会を増やしていった。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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