青森山田のトレーニングはもはやプロなみ? 仕上げた身体をサッカーに活かす工夫 (3ページ目)

  • 平野貴也●取材・文 text by Hirao Takaya

【メディカル連係体制の充実】

――現在は、OBである若松さんがトレーナーを務めていますが、若松さんが高校生の頃から、すでに青森山田の筋力強化は始まっていましたよね?

 私が高校生の頃は、まだ「体幹トレーニング」という言葉も知らない時代でしたが、フィールドテストやグラウンドフィジカルなどは、すでに行なっていました。その当時から、ワイズスポーツエンターテイメントの山本晃永さん(2004年に起業、2012年からマイクロジムのワイズ・パークを全国展開。サッカーでは世代別日本代表や東京ヴェルディ、ベカルタ仙台でも指導経験があるトレーニング・プロデューサー。2023年からFC町田ゼルビアでメディカルアドバイザーも務めている)が定期的に青森に来られて、指導を受けていました。

――ところで、若松さんは、どういう経緯でチームトレーナーに?

 元々、世代別日本代表の活動において、ドクターの小松尚先生(現・小松整形外科スポーツクリニック院長)と、トレーナーの山本さんが一緒にお仕事をされていたのですが、このふたりと深く親交があった青森山田高サッカー部の黒田剛前監督(現・FC町田ゼルビア監督)が紹介する形で、2016年に青森にワイズ・パークのフランチャイズ1号店を設けようという話になり、荒川栄社長(元・青森山田高男子新体操部監督)が株式会社AKcompanyを立ち上げ、開業に至りました。

 私は、東京のワイズ本社で約1年間勉強をさせていただいてから、青森店の管理者となりました。2015年の神戸でのインターハイからトレーナーとしてベンチに入らせていただいており、2024年は就任10年目となりますが、まだまだ未熟だと思っています。師匠である山本トレーナーが、小松先生のクリニックに月に2回ほどスポーツ外来のリハビリ指導で青森に来られた際や、大会期間中は現場などで助言をいただいており、大変感謝しています。

――ご自身が高校生の頃(2007~2009年)との違いはありますか?

 チームが2016年に全国2冠という成績を収めた経験から、日本一を獲るために最低限取り組まなければならいことが明確となり、選手に求める基準が確立されてきていると思います。

 私が高校生の頃は、まだ全国リーグであるプレミアリーグ(2011年創設)がありませんでしたが、近年では、トップチームがプレミアリーグ、セカンドがプリンスリーグ東北、サードが青森県1部、フォースが青森県2部のリーグを戦っています。

 当時であれば、チーム全体でひとつの東北プリンスリーグを戦っており、負傷した選手は入れ替えて休ませることができていた印象でしたが、近年では、どの選手も自分が属するリーグ戦が週末に控えているので、ケガをしても早期復帰が求められています。

 その点、現在のメディカル連係体制は、日本では画期的なシステムと言えます。例えば、土・日の試合で負傷した選手は、月曜日には提携先の小松整形外科スポーツクリニックで診察してもらい、リハビリ方針を決定。火曜日からは、ワイズ・パークでリハビリを受けられます。チームドクター、トレーナー、コーチングスタッフが情報を共有して、復帰までのサポートをしています。

 ほかにも、負傷選手が適切な指導を受けられず無理をして状態が悪化するケースや、復帰に向けた筋力アップが不十分で復帰後すぐにケガを再発させてしまう事例が珍しくないと思います。

 その点においては、山本さんが作り上げたメソッドによって、リハビリプログラムや復帰までの段階性が明確化されていることから、チームに対しても復帰までのスケジュールを明確に伝えることができます。この辺りは、10年前に比べると、青森にもワイズ・パークがあることで、円滑に連係が図れていると実感しています。

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