Jリーグ昇格請負人が悲痛な叫び「移籍の速さについていけない」 J2・J3「沼」の正体をギラヴァンツ北九州・小林伸二前監督が明かす (3ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【J2昇格後1年目の躍進と選手の大量流出】

 翌2020年シーズンは、チームとしては4年ぶりのJ2リーグでの戦いとなった。3月19日に新型コロナのパンデミックにより、早々と「降格なし」が決定した。一方で7節から15節まで9連勝、18節から21節まで首位に立つなど快進撃を見せた。

「戦術が前のシーズンから続いているからですよ。それで昇格して勝った経験が自信につながっていたんです。Jリーグでは他にも『昇格後すぐに躍進』という事例は多いですが、似た背景だと思います」

 しかし、シーズン後半はそのプレスが相手に読まれ、対策をたてられた。失速し、最終順位は5位で「相手もJ3から上がってきたチームに好き勝手やられるか、という意地を見せてきましたね」

 そして、このシーズンが終わる前から「引き抜き」の兆しはあった。12月に横浜F・マリノスからレンタル中だったMF椿直起(現ジェフユナイテッド千葉)の横浜FMへの復帰と、オーストラリアのメルボルン・シティへのレンタル移籍を発表された。

「本人は英語もずっと勉強していたくらいで...本人の意思がそこにあるんだったら、そこで頑張ってという話になりました」

 シーズン終了後、FWディサロ燦シルヴァーノ(現湘南ベルマーレ)に対し、清水エスパルスからのオファーが届く。

「行ってみないことにはわからない。ダメだったら帰ってくればいいやっていうような感じで、行ってみろと言いました。最初に出ていくことになったのは彼ですね」

 するとその後、GKの永井堅梧(現横浜FC)や、のちにカタールW杯日本代表となるFW町野修斗(現ホルシュタイン・キール=ドイツ)にオファーが相次いだ。DF福森健太(現栃木SC)やMF加藤弘堅(現長野パルセイロ)にも...いずれもJ1やJ2でより資本力のあるクラブなどからのオファーだった。

 さらに、小林が「渋いライン」と称したMF藤原奏哉に当時J2だったアルビレックス新潟から声がかかり、チームのキャプテンを務めてきた川上竜(現FC岐阜)までもがSC相模原へと流出していく。多くはJ3時代に入団した選手たち。小林の下で個人のブランド価値を上げ、上のクラブから請われる存在となっていったのだ。

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