Jリーグ昇格請負人が悲痛な叫び「移籍の速さについていけない」 J2・J3「沼」の正体をギラヴァンツ北九州・小林伸二前監督が明かす (4ページ目)
【「上に行くな」とは言いにくい】
2020年シーズン終了後の契約交渉による"戦禍"は凄まじかった。気がつけば退団者は合計13人。同シーズンの出場時間上位11人のうち8人が退団、それら選手たちが同シーズンに挙げた得点の合計がチーム総得点のじつに3分の2以上だった。
最初のディサロ燦シルヴァーノを引き留めていれば...そんなことは思わなかったのか。そう聞くと、小林はこう答えた。
「それはできないですよ。今や『J2やJ3から国内でステップアップして、欧州リーグへ』という流れができつつあるんです。Jリーグはもうすでに、欧州5大リーグに選手を供給するリーグになっているからです。代表チームを見たって『日本はすごい』ということになっている。
そうなると、J2やJ3のクラブが他クラブからオファーのあった選手に対して『上に行くな』とは言いにくいですよ。どのみち国内に留まるのなら『ウチでいいじゃないか』とも言えるんですが。金額的にも対抗しようがないですし。北九州が大奮発して年俸1000万円に近づけようとしても、上のクラブはポンと1200万円を出してくるので」
躍進を遂げた2020年シーズンのチーム人件費の総額は3億3000万円。J3だった前年からは8000万円増だったが、それでもJ2平均の半分以下という水準だった。
著者プロフィール
吉崎エイジーニョ (よしざき・えいじーにょ)
ライター。大阪外国語大学(現阪大外国語学部)朝鮮語科卒。サッカー専門誌で13年間韓国サッカーニュースコラムを連載。その他、韓国語にて韓国媒体での連載歴も。2005年には雑誌連載の体当たり取材によりドイツ10部リーグに1シーズン在籍。13試合出場1ゴールを記録した。著書に当時の経験を「儒教・仏教文化圏とキリスト教文化圏のサッカー観の違い」という切り口で記した「メッシと滅私」(集英社新書)など。北九州市出身。本名は吉崎英治。
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