青森山田の守護神は驚くべきメンタルの持ち主 準決勝も「PKが来るだろうなっていうのは予測していて」2本もストップ (3ページ目)
【黒田剛監督が退任しても伝統の勝負強さは変わらず】
試合の内容的には、後半に押し込んだ市立船橋が上回っていたように思える。それでも勝ったのは青森山田だった。悪い流れのなかでも勝利だけは掴み取る。近年の高校サッカー界をリードする青森山田の強さの秘訣は、果たしてどこにあるのか。
市立船橋の波多監督は「セットプレーだったり、守備の強度だったり、ひとつひとつのクオリティがまず高いということ。それから試合運びのうまさというものが、脈々と受け継がれているんじゃないかと思っています。(優勝した)プレミアリーグでもそうですし、一発勝負の試合においても発揮できる勝負強さというところは、すごくリスペクトしています」と、その勝負強さに舌を巻いた。
一方で市立船橋のキャプテン・太田隼剛(しゅんごう/3年)は「ゴール前での身体の張り方のところでは、(青森)山田さんのほうが少し上だったと思います。あとは、日頃のピッチ外での行動っていうところで、まだまだ自分たちには甘さがあったのかなと思います。山田さんは、本当にそういうところまで突き詰めてやっているから、特別な戦い方はしてないですけど、毎年毎年、高校世代のトップで戦えているのかなって思います」と、日常の意識に差があると感じたようだ。
青森山田の選手からあふれ出るのは、国立の大舞台でも動じない圧倒的な自信だ。妥協なき日常の積み重ねが、彼らに確たる自信をもたらしているのだろう。
守護神の鈴木は言う。
「信じられるのは自分自身だと思っているし、 自分を信じ続けて毎日毎日を積み重ねていくことで、こういう大舞台になったとしても、変わらず結果を出せる。そういうものだと思っているので、本当に日常から準備の部分だったり、1日1日成長し続けることを意識してやっています。その積み重ねが、こういう結果を生んでくれているのかなと思います」
長年、チームを指揮してきた黒田剛監督(現・FC町田ゼルビア監督)が退任し、正木監督に代わっても、伝統の勝負強さは変わらない。そこには脈々と受け継がれる意識の高い日常があるからだ。
2大会ぶり4度目の優勝を目指す近江(滋賀)との決勝戦でも、彼らは臆することなく、ふだんと変わらない戦いを見せるのだろう。
著者プロフィール
原山裕平 (はらやま・ゆうへい)
スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。
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