クォン・スンテが鹿島アントラーズでの7年間を振り返る 最初に発した日本語は? (2ページ目)

  • 吉崎エイジーニョ●取材・文 text by Yoshizaki Eijinho

【ACLで3度の優勝】

 そうやって始まったクォン・スンテの鹿島での日々。2018年には鹿島でもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝を果たした。通算3回目。それも日韓の異なるクラブでのACL優勝。これはクォン・スンテのみが有する最高の栄誉だ。

「そうこうしているうちに、そういう栄誉を得ましたね。それぞれの優勝はまったく違う風景に見えました。全北での2006年の初優勝時は何もわからない新人で。2016年には切実に優勝を望んでの優勝でした。

 鹿島での2018年の優勝は確かに『キミが必要』とオファーを受けたものでしたが、内心ではちょっと不可能かな、とも思っていたんです。目指しはするものの、実際に想像がつかなかった、というか。日々、ベストを尽くせば良い結果はある、とだけ考えての挑戦だったんです。

 つまり鹿島での優勝は『できないと思っていたことが実現する』感覚でした。求めていたものが違うと、そこで見える風景がまったく違ってくる。そういうことも感じましたね」

 そのACL優勝の過程のなかで、クォン・スンテは、自国である韓国チームとの対戦も経験している。今、日本人のアジアのクラブへの進出も多くなり、ACLでも時折「Jリーグ勢の相手チームに日本人がいる」という状況も出てきたが、この点では韓国が大きく先に進んでいる部分だ。

「実際、韓国人選手たちと会うと嬉しいですが、競争心も生まれるものです。自分なりのプライドがあり、そのなかでいい競争を通じて勝敗を決めなければならないので。ピッチ外では同じ韓国人としての絆がありますが、ピッチでは自分のチームのために戦わなければならない。負けたくない気持ちは当然です。

 実際、自分のチームがどこの国のチームに所属していても、チームが勝つことを望むのは、選手としての本質的な職業意識ですから。だから、勝てば嬉しいですが、一方で韓国のチームも勝ってほしいという気持ちも同時に存在する部分です」

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