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サガン鳥栖・川井健太監督のキャリアハイを生む選手育成術「ミスを認めない選手が一番、タチが悪い」 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

――ウイングバックだった長沼は複数のポジションをこなすようになり、ストライカーとしても覚醒した感があります。

「ペナルティエリアでは、顔を変えないといけないんですよ。エリアの外では、ある程度、みんな同じような顔で問題ないのですが。辿り着いたところで、フィニッシャーの顔になれるか」

――横山歩夢にも爆発力を感じます。

「横山はケガもあって出遅れましたが、成長していますよ。(波はありますが)今はそれでいいです。賢さを身につけるトレーニングもしているし、本来のフィニッシャーの顔、リンクマンの顔(フィニッシャー以外のフィールドプレーヤーの顔)、同時進行でよくなっていますよ」

――小野、長沼という純然たるストライカーではなかった選手の得点が増えました。

「『FWは感覚で教えられないから、外国人FWに頼る』という発想も悪いことではないし、僕らにもその可能性はあります。では、なぜ小野、長沼がそれだけ得点をとっているのか。しっかりロジックで伝えているつもりです。彼らはキャリアハイの得点で、とり方のパターンもこれまでと違います。トレーニングで教わって自分に取り込み、『こういうことね』と納得してゴールできています。僕らスタッフは、"ペナルティエリアの中も教えられる"と信じています」

 J1において鳥栖は戦力予算が下から1、2番目のチームである事実を忘れてはならないだろう。そのなかで、能動的フットボールで降格を回避。選手が確実に覚醒を続けているのは福音である。

Profile
川井健太(かわい・けんた)
1981年6月7日、愛媛県生まれ。現役時代は愛媛FCでプレー。指導者としては環太平洋短期大学部サッカー部監督を皮切りに、愛媛FCレディースヘッドコーチ、日本サッカー協会ナショナルトレセンコーチ、愛媛FCレディース監督、愛媛FC U‐18監督、愛媛FC監督、モンテディオ山形コーチを経て、2022シーズンからサガン鳥栖監督に就任した。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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