川崎フロンターレの「常勝」への執念 不本意な戦いでも手にしたタイトルの意味

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 試合内容は、まるで冴えないものだった。とてもチャンピオンの称号にふさわしいものだったとは言い難い。

 しかし、「常勝」と称されるだけのチームになる過程において、こうして泥臭く勝ち取った優勝もまた、必要なものであることは確かだろう。苦しんだシーズンを象徴するような内容に終始しながら、それでもタイトルを手にしたことの意味は決して小さくない。

 国内主要三冠のうち、最後の一冠を争う天皇杯決勝。川崎フロンターレは、柏レイソルを延長戦も含めた120分間スコアレスの末にPK戦で退け、優勝を手にした。

 2017年にJ1初優勝を果たし、初タイトルを手にして以来、これが7シーズンで7つ目となるタイトルの獲得である。

3大会ぶり2度目の天皇杯優勝を飾った川崎フロンターレ。photo by Kishiku Torao3大会ぶり2度目の天皇杯優勝を飾った川崎フロンターレ。photo by Kishiku Toraoこの記事に関連する写真を見る とはいえ、アジアへとつながる重要なタイトルマッチは、川崎にとって非常に苦しいものだった。柏が立ち上がりから果敢なプレスで優勢に立ったとしても、たいていはどこかで川崎が落ちついてボールを動かす時間がくるものだが、ついにそんな時はやってこなかった。

「試合は終始、柏のペースだったかなと思う」

 川崎の鬼木達監督もそう認めるとおり、単純なシュート数ばかりでなく、決定機においても、その数で上回っていたのは柏だった。

 開幕直後から低迷が続いた今季の川崎は、優勝争いに加わるどころか、ふた桁順位で過ごす時間も短くはなく、最終順位も8位。最後はよく盛り返したとも言えるが、今季の順位は2005年のJ1昇格以降ワースト2位タイ。初優勝を遂げた2017年以降では、ワーストである。

 この日の国立のピッチにあったのも、今季何度も見た、思うように進まない試合に苦しむ選手たちの姿だった。

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