サッカーの審判にとって「関西のリーグが日本一厳しい」と思う理由を元プロの村上伸次が語る (4ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko
  • photo by Getty Images

【今は3級レフェリー】

――レフェリーの育成や発掘をされながら、ご自身も下のカテゴリーで吹かれていたりするんですか?

 関西では吹きませんね。でも一応、プロレフェリーを引退したあとは3級レフェリーの資格を取得しました。

――1級のままではないんですね。

 各4、3、2級及び1級はフィットネステストがあります。それに受からなければいけないんですよ。よく言われるのが、フィジカルは40歳で1回落ちるんですよ。45歳でもう1回落ちて、50歳前後でみんなリタイアしていきますね。

 私が引退したのは52歳だったので、もう大変です(笑)。やっぱりスプリントが基準の記録で走れなくなります。インターバルは心拍系なのでまったく問題ないんですけど、スプリントは筋力ですよね。40mを6秒で走って、それを6本連続でやらないといけないんです。

――それは大変ですね。

 それだけじゃないですよ。そのあとに400mトラックで75mを15秒+25mを18秒、それを4本で1周です。それを10周(合計40本)やるんです。私も引退するまでそれをクリアしていました。

 若い頃はトレーニングしなくても大丈夫でしたけど、ある程度年齢がいくとフィットネステストのためのトレーニングが必要なんですよね。毎年12月~翌年1月にテストがあるので、その時期が近づくとみんなソワソワしてきます(笑)。

――関西では吹かないということですけど、岐阜では吹かれているんですか?

 公式戦はほとんど吹きません。先日、中学生の公式戦を一度吹いたくらいです。でもそれ以外ではFC岐阜の練習試合で吹きました。練習試合では級がなくても大丈夫なんですけど、一応ワッペンをつけて吹きました(笑)。

 やっぱり自分でレフェリーをしていると、現役の感覚を残したままでいられるんですよね。プロの練習試合をさばくことで、「このポジションからペナルティエリアの中を見た時にちょっと見にくいな」とか、そういうレフェリー勘みたいなものが戻ってくるんです。

 そこを大事にすることで、若手のレフェリーへもフィードバックできると思うんです。だから今でも練習試合で吹かせてもらっていますね。

――それでは最後に、Jリーグで今後こうなっていってほしい点などはありますか?

 レフェリーの立場としては、きちんと判定をするというところは続けていってほしいですね。

 そのなかでレフェリーがミスをすることはあると思います。それは選手たちも「あ、レフェリーちょっとミスしたな」というのはわかっていると思うんです。その時に試合が終わってから、少しだけでもそのことについて話せる間柄になってくれるといいなと思うんですよね。

「間違っているからおかしいだろう!」ではなくて、ラグビーのノーサイドじゃないですけど、両者が落ち着いて話をしてほしいと思います。勝ち負けが絡むことなので、試合のあとが難しかったら次の試合の前でもいいですしね。

 ただ、そこまでの関係になるのには時間がかかるものです。私も40歳あたりでようやく「この前はごめん、間違っていた」と言えるようになりました。そうやって選手とレフェリーが協力して、いい試合を作っていけるリーグになっていけたらいいなと思います。

この記事に関連する写真を見る村上伸次 
むらかみ・のぶつぐ/1969年5月11日生まれ。東京都目黒区出身。帝京高校-立正大学と進み、JFLの西濃運輸でプレーしたのち、28歳からレフェリーの道へ。2004年からJリーグの主審として活動。2008年からスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー/PR)となった。2021年10月のヴィッセル神戸対アビスパ福岡戦で、Jリーグ通算500試合出場を達成。この年を最後に㏚を引退し、現在は後進の指導にあたっている。

プロフィール

  • 篠 幸彦

    篠 幸彦 (しの・ゆきひこ)

    1984年、東京都生まれ。編集プロダクションを経て、実用系出版社に勤務。技術論や対談集、サッカービジネスといった多彩なスポーツ系の書籍編集を担当。2011年よりフリーランスとなり、サッカー専門誌、WEB媒体への寄稿や多数の単行本の構成を担当。著書には『長友佑都の折れないこころ』(ぱる出版)、『100問の"実戦ドリル"でサッカーiQが高まる』『高校サッカーは頭脳が9割』『弱小校のチカラを引き出す』(東邦出版)がある。

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