リーグ1位のアシスト数・樋口雄太は無心でボールを蹴っている「練習してない時のほうが逆にいい」
樋口雄太(鹿島アントラーズ)インタビュー後編
◆樋口雄太・前編>>PKを2度外した天皇杯で「気持ちも吹っ切れた」
責任は、時に過度なプレッシャーになり、自分自身を押しつぶしてしまうこともある。しかし、鹿島アントラーズでプレーする樋口雄太の場合は逆だ。
責任や障害、乗り越えなければならない壁は、自分を奮い立たせるスイッチになっている。
「自分はやらなきゃいけないと思った時のほうが、結果を出せるタイプなのかもしれません。ちょうど、(広瀬)陸斗くんとも同じようなことを話していて、振り返ってみると、自分も精神的に追い込まれたときのほうが次の試合で結果を残しているんです」
サガン鳥栖から鹿島アントラーズに移籍して2年目この記事に関連する写真を見る すべてのタイトル獲得を目指す鹿島において、7月12日に行なわれた天皇杯3回戦で、ヴァンフォーレ甲府に敗れた責任は重くのし掛かった。1-1で延長戦を終え、13人目まで突入したPK戦で、2度もPKを失敗した事実はなおさらで、樋口の心にじわじわと悔しさを浸食させていった。
だが、本来であれば避けたいはずの話題に、樋口は自ら切り込み、こう言った。
「時間が経つにつれて、徐々にその責任を感じていって。次はチームを助けられる、チームに勝利をもたらせられる選手にならなければいけないと心に誓いました。その決意が、続くFC東京戦(第21節)の2アシストにつながったと思っています」
思い出したのは、サガン鳥栖でプロになった頃のことだった。
「大学を卒業して、育成年代の多くを過ごした鳥栖で念願だったプロになれた時は、何でもできると思っていました。でも、挫折を味わい、ミスをすることが怖くなってしまった時期がありました」
プロ1年目の2019年、樋口はリーグ開幕戦にメンバー入りすると、第2節のヴィッセル神戸戦で途中出場し、デビューを飾った。並行して行なわれていたYBCルヴァンカップでは先発出場する機会にも恵まれた。
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プロフィール
原田大輔 (はらだ・だいすけ)
スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。