リーグ1位のアシスト数・樋口雄太は無心でボールを蹴っている「練習してない時のほうが逆にいい」 (3ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • TOBI●撮影 photo by TOBI

【アシスト数の増加はゴール前にいる選手たちのおかげ】

 樋口自身は、FC東京戦がラストチャンスだと思っていた。自分にはあとがない、追い込まれた状況が、彼を奮起させたのである。

「FC東京戦で、自分自身を変えてやろうと思って臨んだ結果、うまくいって。1年目は自分のやりたいことだけをやろうとしすぎて、空回りして失敗した経験があったので、2年目は少しずつ試合に出られるようになって、チームとしてやるべきことに目を向けられるようになりました。

 試合の入りや立ち上がりをよくしようとか、細かいところにも気をつけていったら、出場機会も、出場時間も増えていった。振り返ると、高校も、大学も、そしてプロも一緒なんです。自分は追い込まれることで、それを乗り越えて、段階を踏んでよくなっていった。

 プレーも同様で、まずはチームのためになることをやって、それができたら次は守備に目を向ける。それがまたできたら、次は攻撃に目を向ける。そうやって自分にできることを少しずつ、少しずつ増やしていくことで、見える景色が変わっていくんだと思います」

樋口雄太が鹿島で背番号14を背負う理由も語った樋口雄太が鹿島で背番号14を背負う理由も語ったこの記事に関連する写真を見る 鹿島に加入した昨季も、リーグ戦32試合に出場したとはいえ、樋口にとっては段階を踏んでいたのであろう。今季、リーグ戦で11アシストという数字以上に、攻撃で見せる存在感、守備で見せるハードワークは際立っている。

「アシストは数字だけを見ると、すごいと言ってもらえるかもしれませんが、自分としてはその内容を追求すると、セットプレーからがほとんどなので、果たして自分の力だと評価できるものなのかと。

 しかも、アントラーズに加入してからなんですよね、CKやセットプレーでアシストできるようになったもの。もちろん、自分のキックの調子もいいですけど、やっぱりゴール前にいる選手たちのおかげなのかなって思います」

 以前よりもキックの練習をしているのか──と問いかけると、樋口は首を横に振った。

「練習してない時のほうが、逆にアシストできる機会は多いんです。練習すると、いろいろと考えすぎてしまって、迷いが出てくるので、無心で蹴っている時のほうがいいと思っています」

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