樋口雄太が止まると鹿島アントラーズの攻撃も止まる PKを2度外した天皇杯で「気持ちも吹っ切れた」
樋口雄太(鹿島アントラーズ)インタビュー前編
じわじわと上位に近づいている。ひたひたと上位に迫っている。J1第27節を終えて3位に浮上した鹿島アントラーズのことだ。
首位との勝ち点差は「6」。まだまだ開いているとはいえ、十分に射程圏内に捉えていると言っていいだろう。
今季、リーグトップとなる11アシストを記録している樋口雄太が、チームのターニングポイントを挙げる。
現在リーグ1位の11アシストを記録している樋口雄太この記事に関連する写真を見る「(第9節の)アルビレックス新潟戦がひとつのポイントでした。それまでチームは4連敗していましたが、その期間で僕自身もすごく考えさせられましたし、思い返すとチームにとっても必要だったと思えるくらい、濃い時間を過ごしました。今、あの負けをムダにしないチームになってきています」
樋口がポイントとして挙げた新潟戦で、2-0の勝利を収めたチームの変化は「守備」にあった。
「連敗を脱する勝利を挙げたことが変わるきっかけだったとは思いますけど、あの試合で、それまで曖昧になっていた守備が整理され、ひとりひとりの役割がはっきりしたことが大きかった。それによって、守から攻へと移る作業もスムーズになり、守備だけでなく攻撃にも大きく影響をもたらしたように思います」
その変化を、さらに樋口が解き明かす。
「以前はひとりひとりが単体で守備を頑張っていたのが、新潟戦を機にみんなで守備を頑張っているような連動性へと発展しました。だから守備も、守備だけで終わることなく、その守備を生かして攻撃につなげられている。それによって守から攻への切り替えが速くなり、その速さのなかでそれぞれのアイデアも出せるようになってきたことで、チームは成長しました」
「この説明でわかりますか?」と、謙遜する樋口に強くうなずいた。
今季の鹿島は、前線からの絶え間ない守備で相手を追い込み、意図したエリアでボールを奪うと、すぐさま攻撃へと転じていく──。それが一度や二度ではなく、連動かつ連続して行なわれることにより、攻撃の迫力へとつながっている。
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著者プロフィール
原田大輔 (はらだ・だいすけ)
スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。