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サガン鳥栖が新設したポスト、GKダイレクターとは? 守護神を育てるのにも必要な「必然のディテール」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「健太さんの言葉は的中するし、サッカーも面白い」
 
 鳥栖は多くの選手が、ピッチに立つことに幸せを感じている。それはクラブが求める風景でもある。あとは勝利に結びつけられるか。横浜FM戦は、ブラジル人アタッカーたちのゴールに対する執念と腕力に後手に回ったのも現実だろう。川崎戦も後半開始とともに大島僚太の投入でどんどん前にパスをつけられ、混乱を収拾できないまま失点を浴びた。

「悪くはない内容ですけど、それで選手が満足してもいけない」

 川崎戦後、ゲームキャプテンである小野裕二の言葉は、正鵠を射ていた。

「一度できれいに攻め崩してゴール、というのは難しい。もっと攻撃に厚みを持って、どんどん人が入って攻められるようにしないと。マリノス戦はそれができていたから、シュートまで持ち込める回数も多かったんだと思います。鳥栖は真面目でおとなしい選手が多いですが、勝負のところはもっと迫力を見せられるように......」

 川崎戦はもっと崩しきって、人が湧きあがる展開に持ち込めていたら、シュートチャンスも増えただろう。

「人で解決するのではなく、グループとして戦いを挑む」

 それが経営面も踏まえたチームコンセプトだが、結局は個人に行き着く。

 小野のゼロトップに近い形は最善の策だが、新エースと目されたストライカー、富樫敬真のケガによる戦線離脱は計算外か。スペックを考えたら覇気が足りない選手もいる。チームの礎ができつつあるなか、誰が殻を破るのか。川崎戦は後半途中出場の堀米勇輝が右から左へパス交換をしながらプレーの渦を作り、ラインを完全に破るパスを出し、可能性を感じさせていた。

 次戦は5月10日、アジア王者になった浦和レッズと敵地での対戦だ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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