サガン鳥栖が新設したポスト、GKダイレクターとは? 守護神を育てるのにも必要な「必然のディテール」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

【「朴一圭のプレーもよくなっている」】

 GKダイレクターは、Jリーグだけでなく、世界でも異例だろう。そんななかで、FCバルセロナはGKに徹底的なリベロプレーを求める特殊性もあるため、育成年代のGKダイレクター職があって、一貫性を担保している。今回の鳥栖も、通底したプレー規範でトップまで昇格できるGKを育てる狙いだ。

「GKダイレクターが世界基準を示せるようになって、パギ(朴)のプレーも確実によくなっている」と首脳陣が言うように、現在の補強と未来の育成をつなぐ企画と言える。

「攻められるなら、決定的シュートを止めることでアピールになるし、自分たちが攻めるなら、どんどんパスを散らして攻撃を組み立ててと、全部ポジティブに考えています」

 そう語る朴は、今シーズンも1試合で2度、3度とビッグセーブをやってのけている。

「試合では手ごたえを感じていて、あとは(攻撃のところで)誰が"最後のひと刺し"をやってくれるのか。拮抗した試合をものにするには、やはりそこは必要ですね。ミーティングでも、クロスの入り方のところは、こぼれ球のところも詰めていけるのか、強いチームの選手はどんどん入ってくるので、それができるようになってくれば、上にいけるはずです。今はうしろから見守る"お父さん"の気分ですかね(笑)」(朴)

 川井監督招聘にも大きく関わった小林祐三スポーツダイレクターが、GKダイレクターのポスト新設も推進した。まだ30代の彼を中心に、選手もスタッフも正しい査定を受け、恵まれた仕事環境を手にし、モダンなクラブに生まれ変わりつつある。今はディテールの積み上げ中だ。

 横浜FMには1-3で敗れたが、選手は勇敢さを見せ、互角の戦いだった。王者に対して撃ち合い、「もしこのシュートが入っていたら......」という瞬間が何度もあった。1-0で敗れた川崎戦も、前半はほとんど相手陣内に押し込んでいた。「敵陣で戦っている限りは攻撃」という鳥栖のロジックに従えば、カウンターも折り込み済みで、狙いどおりだった。

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