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乾貴士「楽しくやれてます」権田修一「J2で勝って満足はしていない」エスパルスを覚醒させた秋葉新監督の手腕とは? (2ページ目)

  • 戸塚 啓●取材・文 text by Totsuka Kei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

【トップ下で輝き出した乾貴士】

 秋葉監督は戦術にも手を加えた。

 ゼ・リカルド前監督は4-4-2を主戦術とし、2列目のサイドプレーヤーをウイングのようにプレーさせた。本来はストライカーの北川航也を、右サイドで起用したりもした。

 ところが、サイドアタック偏重で守備側の目線をずらせず、ななめのランニングが少ないので相手の背後を取ることもままならない。バリエーションに欠ける攻撃は相手の脅威となりえず、主砲チアゴ・サンタナが1本もシュートを打てない試合もあった。

 4-4-2では封印されがちだった個性を、いかにして解放するか──。秋葉監督の答えは、4-2-3-1へのシステム変更だった。

「清水エスパルスには強烈な個、強烈な武器を持っている選手がたくさんいますので、まずはそれを発揮させる。ウィークなことを求めるわけでも、適正でないポジションで使うわけでもなく、もともと持っているものをしっかりと出してもらおうと。まずはよさを出すところから入っているので、選手は生き生きとフットボールを楽しんでくれています」

 秋葉監督のJ2リーグ戦初采配となった8節の東京ヴェルディ戦は、0-1から2点を奪って勝ち点3をゲットした。続くベガルタ仙台戦は1-1のドローに終わったが、翌10節のレノファ山口FC戦は6-0の大勝を飾った。

 システム変更で輝き出した象徴が乾だ。2018年のロシアW杯で2得点をあげた34歳は、トップ下で新境地を拓いている。

 乾自身は「まぁ、楽しくやれてます。それが一番やと思います」と小さく笑みを浮かべ、「サイドをやるにはなかなか難しい年齢にもなってきているので、真ん中だとキレとかじゃないところで勝負できる部分もある。そこでどれだけ勝負できるか。どれだけうまくできるかを求めています」と続けた。

 背番号33が幅広くボールに関わることで、中央からの崩しとサイドアタックのバランスが適正になった。加えて選手同士の距離感がよくなり、チーム全体としてワンタッチパスを効果的に使えるようになっている。

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