乾貴士「楽しくやれてます」権田修一「J2で勝って満足はしていない」エスパルスを覚醒させた秋葉新監督の手腕とは? (4ページ目)
【J1昇格へ目指すは25勝の壁】
過去5シーズンにJ1へ昇格した10チームを見ると、半分の5チームが25勝以上を記録している。現在3勝6分2敗の清水が25勝に到達するには、残り31試合で22勝が必要になる。権田が「追い込まれている」と話すのはそのためだが、表情に悲壮感はない。視線には強い光が宿っている。
「このチームはもっとできると思うし、もっとやらないと......今J2ですけど、J2で勝って満足はしていないですし、J1へ行っても勝てるベースを作る状況でもあると思います。それに対しては、こだわり続けてやらないといけない」
昨シーズンまでJ1で過ごした清水とジュビロ磐田は、J1のチームとともにルヴァンカップに出場している。そのため、清水は3月26日のルヴァンカップから4月22日の大宮戦まで、中2日か中3日で9連戦を消化してきた。
秋葉監督はルヴァンカップで若手選手を多く起用し、選手の疲労を分散させていった。しかし、ターンオーバーで選手のコンディションを整えることはできても、準備期間が限られるのは変わらない。中2日や中3日では、戦術的な落とし込みは難しかっただろう。
過密日程のなかでも浮上してきたのは、「適材適所の選手起用」と「正しい競争原理」が持ち込まれたからだ。それによって一人ひとりのポテンシャルが解き放たれ、ピッチ上で化学反応が起こるようになっている。ミスが生まれても積極的なチャレンジに基づいているから、精神的に引きずることなくアグレッシブにプレーできる。意欲的な姿勢が相手に脅威をもたらし、ゴールをこじ開けることにつながっているのだ。
5月も水曜開催が3度あり、7試合を消化する。スケジュールは依然として厳しい。それでも、秋葉監督に率いられた今の清水は、タフな日程を跳ね返すだけのエネルギーに満ち溢れている。
著者プロフィール
戸塚 啓 (とつか・けい)
スポーツライター。 1968年生まれ、神奈川県出身。法政大学法学部卒。サッカー専
門誌記者を経てフリーに。サッカーワールドカップは1998年より 7大会連続取材。サッカーJ2大宮アルディージャオフィシャルライター、ラグビーリーグ ワン東芝ブレイブルーパス東京契約ライター。近著に『JFAの挑戦-コロナと戦う日本 サッカー』(小学館)
【画像・表】乾貴士や権田修一は? Jリーグ&サッカー日本代表・出場数&得点数ランキング
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