古橋亨梧や旗手怜央らの活躍を横目に、井手口陽介が抱えていた苦悩「このままだとサッカー人生が終わってしまう」 (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・構成 text by Takamura Misa
  • photo by Getty Images

 スコットランドリーグのなかでも圧倒的な攻撃力を誇るセルティックは、昨シーズンもリーグ最多得点で優勝したように、シーズンを通してボールを保持しながら攻勢に試合を進めることが多い。それは、今シーズンの戦いを見ても然りで、対戦相手は試合のスタートから、がっつりと引いて守備ブロックを固めてくることも珍しくはない。

 だがそれは、井手口のようにフィジカルの強さを生かした中盤でのボール奪取力や、そこからの展開力を持ち味とするプレースタイルの選手が輝きづらい戦いとも言える。

「相手に攻め立てられるシーンが多ければ、3枚の中盤のうちの1枚に守備的な選手を置くことも考えるはずで、そうなれば僕の持ち味が生きるところもあると思います。でも昨シーズンも、ほとんどセルティックが攻めて、相手が引いて守るという構図の試合がほとんどでしたから。

 それもあって、ボスも中盤には攻撃に特徴のある選手を据えることが多かったし、自分が出場した試合を振り返っても、どこか自分らしいプレーを出しきれていない感じはありました」

 だからこそ、2シーズン目を戦うにあたっては、シーズンを通して戦えるコンディションを作り上げるだけではなく、自分の"生き方"を模索し、プレーの幅を広げることを意識しながら準備していたという。

 FW古橋亨梧を筆頭に、井手口と同じタイミングで加入したFW前田大然やMF旗手怜央ら攻撃陣が、次々と結果を残していく姿に思うところもあったはずだが、いろんな雑念は「自分と向き合わないと何も始まらない」という思いでかき消した。

「1度目の海外移籍をもとに、2度目の海外を決断した時から、『そんな簡単にはいかんやろうな』って思っていたので。海外で結果を残すには......ポジション的なことを考えても、僕自身がもっと適応する術を身につける必要も感じていました。

 そういう意味では、試合に絡めない状況から這い上がるメンタリティみたいなところを含め、自分が試されている気もしていたので、とにかく現状を受け入れたうえでやれることをやりきろうと思っていました」
 
 ところが、2022-2023シーズンの開幕を1週間後に控えた練習中、井手口は勢い余って用具と激突し、左膝周りに20cm近い大きな裂傷を負って、戦線離脱を余儀なくされる。結果、高まっていたコンディションを再び作り直さなければいけなくなった彼の"出遅れ"は明らかで、約1カ月後に戦列に戻っても、メンバー入りすらできない時間が長く続いた。

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