岩本輝雄が選ぶJリーグ歴代フリーキッカートップ10。「羽田空港みたい」「釣り竿のよう」「爆発音」で驚いた名手たち (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・文 text by Shino Yukihiko

【駆け引きと正確性】

7位 阿部勇樹(元ジェフユナイテッド千葉、浦和レッズほか)

 阿部ちゃんはジェフではキッカーを務めることが多かったですけど、浦和に行ってからはあまり蹴らなくなってしまいましたよね。FKの質はものすごく高くて、蹴る機会が多ければ、FKでのゴール数はもっと増えていたと思います。

 彼のキックは腰が入っていて、ライナー性の鋭いボールが飛んでいくのが特徴でした。壁の上から真っすぐ落とすボールだけじゃなくて、壁の外を巻いて入れるボールも蹴れた。あれだけの強いボールは、体幹や内転筋、お尻の筋肉が強くなければ蹴れません。

 キックが多彩なので、短い距離も長い距離もいけるし、直接狙うだけじゃなくて、サイドから合わせるのもうまかったですよね。もっとキッカーとしての阿部ちゃんが見てみたかったです。

6位 遠藤保仁(ジュビロ磐田)

 遠藤選手は南アフリカW杯で決めたFKのように、力強くというより、力を抜いてうまくコースを突いていくキッカーですよね。力が抜けていても軌道がいいし、GKのこともよく見ているので入っちゃいます。

 彼のFKを見ていると、蹴る直前までGKを見て駆け引きしているのがよくわかります。僕もよく試合前にビデオで相手の壁が飛ぶのか、GKが動くのか、動かないのかをチェックしていました。そうすると、壁の作り方とか、GKの立ち位置で決まるコースがわかったりするんです。僕は試合中も、よく相手に「壁飛ぶの?」「GKって動くの?」とか冗談で聞いてましたね(笑)。

 彼のような一流のキッカーは、最終的には壁とかGKとか関係なく、自分のキックさえ正確に蹴ることができれば入っちゃうんですよ。この技術は衰えないので、まだまだ彼のFKは楽しみですね。

5位 エドゥー・マランゴン(元横浜フリューゲルスほか)

 エドゥーと言えば40mの長距離砲ですよね。1994年のジュビロ磐田戦であのとんでもないFKを決めて、次の試合がベルマーレ(平塚、現湘南ベルマーレ)だったんですよ。そしたらまた同じような位置からストレート系のすごいのを決められて「こいつはすごすぎる!」と思いましたよ(笑)。

 エドゥーは体が細いのにパンチ力があるんですよね。彼のイメージをよく"釣り竿"って言っていました。細くてしなやか。全身をしならせてバネのように使い、生まれた全部のパワーをボールに伝える。それがうまいから、あれだけのFKを蹴ることができたんだと思います。

 あれはお金が取れますよね。当時はJリーグもまだスタートしたばかり。彼も「ちょっと日本のファンに見せてやるか」くらいには思っていたかもしれないですね。

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