Jリーグに新風を吹き込んだサガン鳥栖監督に聞く。「残留という言葉は一回も使ってない」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 photo by Komiya Yoshiyuki
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「勝ってOKではない」

――ユース年代で「天才」だった西川潤選手の変化は顕著です。セレッソ大阪時代は能動的に動けず、才能に溺れていました。

「キャンプからシーズン最初、西川は癖がありましたが、僕はこういう選手を変える、成長させることにすごく面白さを感じるほうで、まずは環境を変えること、トレーニングでプレーの連続性を求めました。(練習に)その要素はすべて入っている。そしてやっていったら、本人も『こういうことね。ちょっと掴んだ』と気づく流れにもっていっています。

 ピッチで表現させるにはふたつアプローチがあって、『説明して理解させてからやる』と、『まずはやってみましょう』と。僕が今シーズン、西川と話した時間はトータルで5分弱(笑)。覚えているのは、昼食後に彼が帰る時、監督室で『僕はあなたのプレーが見たい』と伝え、1分程度、話したことです。声をかけたのは、ちょっと変わり始めた時でした。でも次の日、ケガしましたね(苦笑)」

――9月のガンバ大阪戦で西川は先発し、すばらしいプレーでした。

「6月1日の天皇杯(ヴェルスパ大分戦)で、西川はスタメンで出場したんですが、全然ダメだったんです。チームは1対0で勝っていたんですが、最後は試練として左サイドバックにしました。口でどうこういうより、その試練の与え方で。負けたら終わりでしたが、たとえ負けても、その後のリーグ戦、すべて彼の活躍で勝てるかもしれないって」

――選手を変化・成長させることが、成績以上に名将の定義です。

「自分の場合、勝ってOKではない。勝って、次の試合を最高のものにするには、選手に成長してもらわないといけなくて、そこは捨てられないですね。目の前の試合に勝つのは大事だけど、未来の試合に勝ち続けたい。両方どっちも取りたいですが、目の前の試合に勝つだけなら、未来の試合に勝ち続けられるほうで」

――勝負自体は博打だと。

「そうですね。瞬間のものだと捉えています」

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