Jリーグに新風を吹き込んだサガン鳥栖監督に聞く。「残留という言葉は一回も使ってない」
川井健太監督(サガン鳥栖)インタビュー(前編)
サガン鳥栖の躍進が目覚ましい。第31節終了現在8位。何より、サッカーの質が飛び抜けている。首位を走る横浜F・マリノスと互角の戦いを演じて引き分け、川崎フロンターレ戦では殴り合って沈んだが、まさに凄烈だった。自分たちがボールを持って運び、失っても敵ボールを奪い返し、左右からクロスを打ち込み、怒濤で攻めかかる。攻守の輪を回し続けるプレーは「革命的」だ。
今シーズンの鳥栖は主力をごっそり入れ替え、不確定要素が多かった。財政面の苦しさなど、クラブのイメージはパワーダウンしていた。「降格の最有力候補」という予想も無理もなかった。しかし新たに就任した川井健太監督(41歳)が、すべてを覆した。
「起こり得ること、問題はわかっていて、そこを楽しみたい。さあ、"きた、きた"って」
川井監督はそう言う。その言葉は不敵にも、無邪気にも受け取れるが、口調はフラットで強い匂いを感じさせない。あえて主張することではなく、彼のなかで行き着いた矜持があるのだ。
川井監督はJリーグにどんな風を吹かせ、日本サッカーをどこへ導こうとしているのか?
試合中、ピッチの選手に声をかける川井健太監督(サガン鳥栖)この記事に関連する写真を見る――今シーズン開幕のサンフレッチェ広島戦、雪の降る悪条件でしたが、すでにサッカーの仕組みが見えました。
「僕で言うJ1デビュー戦が、こういう条件は面白いなって(笑)。でも開幕戦5試合(無敗)、あれくらいはできると思っていました」
――プレシーズンで土台はできていたと。
「キャンプでは、コーチ、スタッフに落とし込みというか、基準作りをしました。シーズン中はずっと磨く作業でした」
――今の練習では「ひと言も発しないことがあるほど」とのことですが、キャンプで何を一番伝えましたか?
「シンプルですけど、『プレーを続けること』は伝えました。最初に面白かったのが、ロンド(ボール回し)で『ボールが半個出た』、あるいは『ファウルした』ですぐプレーが止まっちゃう。それはあくまで審判がジャッジするもので、止まってしまうと、その時間が無駄になるので、そこから変えていきました。まずは、プレーを続ける。根本に"お客さんを楽しませたい"があって、だからプレーイングタイムを長くしたい。90分のうち、80分くらいボール動いてほしいんです(笑)」
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