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家長昭博が得点王を獲ったら日本のサッカー界はやばい? 浮き彫りとなった日本人ストライカー不足問題 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

組織サッカーも減少の要因?

 得点の数が伸びない原因はいくつか考えられる。

 ひとつは、シーズン途中の海外移籍が挙げられる。今季途中までトップに立っていたのは上田だった。開幕からゴールを量産し、出場18試合で10得点。1シーズンで換算すれば18〜19得点のペースだから、とりわけ多くはないものの、得点王に十分に値する数字となる。

 昨年も15得点を挙げていた古橋亨梧が夏にセルティックに移籍し、12得点のオナイウ阿道とアンデルソン・ロペスもシーズン途中でチームを去っている。4試合で5得点を挙げていた2020年の鈴木武蔵も同様で、目立った活躍を見せた選手がシーズン中に移籍する流れが生まれている以上、自ずと得点王レースの水準は低くならざるを得ない。

 もうひとつは、スタイルの変化だ。組織性を重視し、ひとりのストライカーに依存しないチームが増えている。

 たとえば今季の横浜FMはレオ・セアラを筆頭に、5得点以上を記録する選手は6人。川崎にも4人いる。リーグ全体の得点数は昨季のペースから大幅に減少しているわけではないことを踏まえても、属人的な戦いをするチームが減っていることがうかがえる。FWの役回りが多岐に渡っていることも、個人の得点数が伸びない理由だろう。

 あるいは、コロナ禍の影響もあるはずだ。コンディションの問題や、交代枠の増加、ターンオーバーを敷くことも珍しくなく、恒常的にピッチに立ち続けることが難しくなっている。出場時間が減れば、得点を奪う機会が減少するのは当然だ。

 もっとも一番の問題は、やはりタレントの質ということになるだろう。とりわけ日本人ストライカーに得点王に届きそうなタレントが見当たらないのは、寂しい現実だ。

 福田正博をはじめ、三浦知良、中山雅史、高原直泰、佐藤寿人、大久保嘉人ら歴代の"キング"には、ゴールを奪うための絶対的な武器が備わっていた。得点王になれるポテンシャルを秘めたタレントの海外流出に歯止めが利かないとはいえ、日本人ストライカーの不在がよくも悪くも家長の存在を際立たせてしまっているのである。

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