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中村憲剛と佐藤寿人に教えてもらった。プロはどのような視点でサッカーの試合を観ているのか? (5ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

中村 なるほどね。FWは映らないこともあるか。

佐藤 カメラワークはどうしてもボール中心ですからね。引きの映像をもっと増やしてほしいなと(笑)。でも、ピッポ(フィリッポ・インザーギ)の動き出しの駆け引きだったり、背丈が同じくらいのセルヒオ・アグエロがフィニッシュワークする空間を作るための動きとかは参考にしていました。

 自分のプレースタイルとかけ離れた選手を観ることは、あまりなかったですね。日本だと、ゴンさん(中山雅史)やヤナギさん(柳沢敦)のプレーを観て、真似事ばかりしていました。

中村 「どうやって点を取るか」という引き出しは、いろんな人のプレーや動きが参考になるんだろうね。サイズだったり、スピード感はみんな違うんだけど、点を取る要素は組織的な部分だけではなく、個に依存するところもかなりあるので、意外と似通っているところがあると思う。そう考えると、ボールの動かし方はチーム戦術なところもあるので、中盤はその比率がFWほど高くないと思います。

 だから、特定の選手を参考にすることはなかったです。僕の場合はプレーや技術的なところよりも、自分がどうプレーしようとしているのか。その意志や姿勢みたいなものを感じ取るようにしていました。だから同じポジションだけじゃなくて、サイドバックやセンターバックの動きまで観ていましたよ。

佐藤 やっぱり、観ることは成長につながるんですよ。僕は広島にいた時、青山敏弘に、憲剛くんや俊さん(中村俊輔)のプレーを観てほしいとリクエストしていたんですね。どういうボールの持ち方、置き方をすると、より前へのプレーの選択をしやすくなるのか。それを彼なりに考えて、トレーニングのなかでトライして、結果的に青山は日本でも指折りのパサーになったんです。

 それは、ふたりのプレーを観たことが大きかったと思います。ピッチの上で対峙しただけでは、気づけないことはたくさんある。いい選手の特徴を観ることで自分のプレーに反映させ、成長を遂げた後輩を間近で見てきたので、今の若い選手にもいろんな映像を観てほしいなと思いますね。

◆第12回@中編につづく>>「4バックと思ったら3バック...ウォームアップでだまされた」


【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに入団。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグ最優秀選手賞を受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

【画像】泣き崩れた中村憲剛の姿を忘れない。2017年の川崎は本当に勝負強かった

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