チェイス・アンリ、高卒即海外行きに「FWでスターになるかも」。関わるコーチ誰もが驚く成長スピードと能力 (2ページ目)

吸収力と可能性がすごすぎる

　普段は陽気で明るいキャラクターだが、悔し涙を流したことは一度や二度ではない。

「自分は1年生の時からプリンスリーグ東北などの公式戦に出場させてもらっていたけど、コーチ陣に何回も怒られて寮で泣いていた」

　仲村監督とともに指導にあたる小室雅弘コーチも、チェイスとの思い出で忘れられない出来事があると言う。１年生の時に出場した試合でのことだ。

「ある試合でアンリが退場したんです。綺麗な形でボールを奪えて、すばらしいぞと褒めたんですよね。でも、同じような場面がもう１回あった時に、彼は無理して相手に向かっていき、退場処分になってしまった。そこで泣いてしまったんです」

　ただ、こうした経験を悔しいだけで終わらせないのが、チェイスのよさだ。

　入学当初は代表歴もない無名の存在だった。技術は荒削りで、サッカー理解も深くない。「ヘディングの強さなど、武器を持っている選手だった。ただ、サッカーに関してのスキルは高くはなかったですね」（仲村監督）。しかし、誰よりも謙虚で真面目にトレーニングを重ねてきた。

「ここまで彼が成長できたのは、言われたことは100%やれるから。無視しないでやり続けることができるんです。素直な心もあるので、一生懸命取り組んでくれる。そこがほかの選手との違いです」（仲村監督）

「謙虚だから、（教えを）全部吸収できる。今のアンリでさえ、自分のことを下手だと思っているぐらいですから。これからもずっと努力をしてくれると思う。ひょっとしたら、FWとしてスター選手になるかもしれない。可能性があるから、監督次第ではわからない。そう言えるぐらいの吸収力を持っているんです」（小室コーチ）

　誰に聞いても出てくる言葉は"謙虚で素直"だ。言われたことを地道にこなしていったチェイスは、徐々にできるプレーを増やし、苦手だった足元の技術やキックも大幅に改善した。今では前線へのフィードからチャンスメークするシーンも珍しくなくなった。

　３年次に才能が開花し、各年代の世代別代表に常時招集されるようになった。昨年は飛び級でＵ－22日本代表に選出され、11月に開催されたＵ－23アジア選手権予選にも出場した。

　最後の高校サッカー選手権は２回戦でPK負けを喫したが、その勢いは止まらない。大会終了直後にはＡ代表候補合宿にサポートメンバーとして参加し、大迫勇也らとマッチアップ。日本トップクラスの選手たちとのプレーで「スピードが違って、本当にすごく刺激を受けた」。