チェイス・アンリ、高卒即海外行きに「FWでスターになるかも」。関わるコーチ誰もが驚く成長スピードと能力

  • 松尾祐希●取材・文 text by Matsuo Yuki
  • photo by Matsuo Yuki

突出した運動能力

 チェイス・アンリは、日本サッカー界の常識を変えるかもしれない。

 かつて、高校卒業後、Jリーグを経由せずに海を渡った選手は少なからずいた。たとえば、伊藤翔(現横浜FC)と宮市亮(現横浜F・マリノス)。彼らは高校トップクラスの実力を持ち、それぞれグルノーブル(フランス)、アーセナル(イングランド)でプロのキャリアをスタートさせた(宮市はアーセナル加入後、フェイエノールトに期限付き移籍)。

尚志高からシュツットガルト入りを発表したチェイス・アンリ(左)尚志高からシュツットガルト入りを発表したチェイス・アンリ(左)この記事に関連する写真を見る ただ、彼らは少なからず壁に当たり、思うようにステップアップを果たせなかった。過去の歴史を紐解いても、高卒で欧州挑戦した選手でトップクラブで活躍するキャリアを描けた者は誰もいない。

 それでも、3月に尚志高校を卒業したアンリは、先輩たちが挑戦してきた道に挑む。4月7日にブンデスリーガ1部のシュツットガルト入りが決まった。

 シュツットガルトのU-21チームからキャリアをスタートさせるというチェイスは、188cmのサイズを生かした守備と抜群の運動能力を持つセンターバック(CB)だ。アメリカ人の父から譲り受けたパワーとスピードは規格外で、エアバトルと対人プレーで無類の強さを誇る。

 高校年代では圧倒的な存在感を放ち、個の局面では負け知らず。"アスリート能力に恵まれた選手"という表現がしっくりくるだろう。バスケットボールをやらせてもダンクシュートができるほどの跳躍力を持ち、大柄な選手にありがちな機敏な動きを苦にするタイプでもない。個性的なヘアスタイルに目が行きがちだが、大柄で運動能力に突出している点はMLBの大谷翔平やNBAの八村塁を感じさせるものがある。

 また、闘争心溢れるプレーやひたむきさも魅力で、攻撃参加して前線からDFラインへ戻る時には全力疾走を怠らない。一つひとつのプレーをやりきる姿は、観ている者を清々しい気持ちにしてくれる。

 その一方でピッチ外では、誰からも愛されるキャラクターの持ち主だ。見た目とは裏腹に人懐っこい表情を見せ、気がつけばチェイスの周りには人が集まっている。その姿は、年上の選手たちが揃う世代別代表でも変わらない。「常にフランクで、敬語はほとんど使わない(笑)」と尚志高の仲村浩二監督は話すが、誰に対しても気さくに話しかけられるそのオープンマインドは、中学1年生の夏まで過ごしたアメリカで養われたのだろう。

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