サッカー中継が面白くなる「気持ちいい実況」とは? 噂のアナウンサーを直撃してみた (3ページ目)

  • 池田タツ●取材・文 text by Ikeda Tatsu
  • photo by Getty Images

Jリーグは若い選手の活躍が楽しみ

――下田さんは選手名を毎回のように言ってくれているので、文字数にしたらしゃべっている数は多いと思うのですが、それがまるでうるさく感じないのがすごいし、不思議だなと。

「うるさいという苦情は結構ありますよ(笑)。ただ、そう言ってもらえるのは、見ている映像と音がリンクしているからかもしれませんね。自分の特徴はプレーの細かい描写も入れるところです。『モドリッチ、半身で受けて』『モドリッチ、パスが短かったので寄って受けました』などと、ちょっとした動きの質を逃さないで表現するようにしています。その要素が入るだけで聞こえ方のニュアンスは変わるのかなと。加えて、プレーと言葉がシンクロしている率が高い分、音数が多くても気にならないと言ってくれる方が多いのかもしれません」

――下田さんの実況だと試合に入り込めるというのがありますね。

「ありがとうございます。究極を言ってしまうと、周辺情報や試合前情報など一切なしで、オン・ザ・ボールのプレー描写だけで完結すればそれがいちばんいいのかなと思うところもあります。あくまでトークではなく、実況中継なので、それが理想かなと。僕はオン・ザ・ボールの時はほとんど調べてきたネタを入れない主義です。全く入れないわけではないですが(笑)」

――今季Jリーグで楽しみにしていることはありますか?

「今は、若い選手がチャンスを得られる機会が増えてきていますよね。それは、若い選手たちの意識が変わってきたことも背景にあるのかなと思います。高校やユースから入ってくる選手たちにお客様感が少なくなってきたというか。今まで以上に、1年目から『自分はこのなかに入って普通にやれる』という意識を持っている選手が増えているように思います。

 最たる例はやはり松木玖生(FC東京)ですよね。彼はプレーだけでなく意識レベルがものすごく高い。発言もプレーも、高校の時からそのままですよね。それって本当にヨーロッパっぽいなと。

 ヨーロッパはユースの選手がトップ昇格する時は、その選手が戦力としてトップで使えると判断されたから上がってくるわけです。また、昇格する側も、『いずれ自分はトップでプレーする』というのを前提にサッカーをやっている。だから17歳で昇格したとしても、『ようやく呼ばれたか、やってやるぜ!』というメンタルを持っている。日本の場合は、歴史的に学校体育がベースにあるので、新人か、新人ではないか、みたいなメンタルがあったと思います。その部分が、この数年変わってきている可能性を感じています」

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