柏木陽介、J1から一気にJ3へ。気づいたのは「俺ってこんなもんやな」

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

柏木陽介(FC岐阜)インタビュー@後編

 柏木陽介は、決して罪を犯したわけではない。ルールを守れなかっただけにすぎない。もちろん、ルールを守れなかったことは非難されるべきことだ。社会的影響の大きいプロのアスリートであればなおさらだろう。

 しかし、犯した過ちを反省し、やり直しの利く世の中であるべきだ。その意味で、柏木は助けられた。FC岐阜が救いの手を差し伸べてくれたことで、サッカー選手のキャリアをやり直すことができたからだ。

◆柏木陽介@前編はこちら>>「まさか本当に必要とされなくなるとは...」

岐阜をJ2昇格させるべく全力で臨む柏木陽介岐阜をJ2昇格させるべく全力で臨む柏木陽介この記事に関連する写真を見る「すぐに声をかけてくれたのが、岐阜の小松(裕志)社長でした(当時はGM)。J3でよければ、来てほしいと。僕のなかではJ1でやりたい気持ちもあったし、興味を持ってくれるクラブがあったのも確かです。

 ただ、コンプライアンス的な問題だったり、金銭的な問題もあって、オファーにまでは至らなかったんですね。でも、岐阜はすべてをひっくるめて、来てくれと声をかけてくれました。そんなに求めてもらったことが何よりうれしかったですし、だから割と早い段階で岐阜に行くことを決めていました」

 J1から一気にJ3へ----。レベルはもちろん、クラブの規模も違えば、環境も大きく異なる。それでも柏木は、プライドを捨てて、情を取り、覚悟を持って岐阜へと向かった。

「苦しい戦いになると思っていました。でも、その環境に身を置くことが、今の自分には必要なんじゃないかって。実際に行ってみて本当にしんどくて大変でしたけど、自分に足りない部分を補えたと思うし、まだまだ成長させてもらえるとも感じています。だから、小松社長はもちろん、受け入れてくれたチーム、サポーター、岐阜の街も含めて、感謝の気持ちしかないですね」

 拠点とする練習場はあるが、別会場で練習することもあり、洗濯も自分でしなければいけない。バス移動の遠征も、30歳を超える柏木には楽なものではなかった。

「それも含めていいのかなと思ったし、楽しんでやっていこうって。今まで何もかもが満たされていたなかで、そういうことを経験することが、今の僕には必要なこと。本当に難しい環境と言われるなかで、どれだけできるかというのも見せてやろうと思っていました」

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