中村憲剛と佐藤寿人が若手に伝えたいこと。「ラクな選択をして生き残れるほど、この世界は甘くない」 (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 周りの意見を聞いたり、自分を主張するということは、まさに今回話してきた内容と符合するんです。チームが変わりながらも、10年以上もふたケタ得点を記録したことは簡単ではないですし、寿人が示してきた術は今の選手に参考になることだと思います。

佐藤 それを言うなら、憲剛くんもそうですよ。僕は広島で有益な選手になり続けたい、タイトルを獲りたいと思いながらやってきましたけど、憲剛くんもほほ同じ考えでやってきて、明確な意思があったから長くやれたんだと思います。

 やっぱりラクなほうを選択していると、その意志を強く持ちづけるのは難しい。常に厳しいところに身を置いて、責任を背負ってやってきたからこそ、憲剛くんはあれだけの選手になれたんだと思います。優勝もMVPも、僕がそれを獲得した時よりも年齢を重ねてからですからね。

 僕は憲剛くんがMVPを獲った年齢(36歳)の時は、イメージ通りのプレーができなくなっていたので、どうやったらそうなれるのかと聞いたことがあります。それは僕だけではなく、いろんな人が感じていたと思うんです。技術を磨き続けることの重要性を示してくれたので、これからの選手たちにとってのロールモデルになるんじゃないかなと思います。

中村 僕も寿人も絶対的な武器は持っていたし、プライドもあったけど、それ以外のところではいい意味でプライドを捨てて、柔軟に変化しようとし続けた結果だと思うんですよね。大事なところはそのままに、ほかの部分ではアジャストしたり、アップデートをし続けて、数字を残せる選手になった。

 そういう意味では、大事にしているところと、いかようにも変化できるところの両方を持っておくことが大事。プロだから武器がないと生き残っていけないし、そこは絶対的なものとして磨いていかないといけないけど、それ以外のところはいいほうに変えていく。そこの臨機応変さは、キャリアを長く続けていくうえで大事なことだと思います。

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