中村憲剛と佐藤寿人が若手に伝えたいこと。「ラクな選択をして生き残れるほど、この世界は甘くない」 (5ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

---- 大きな目標を持ったり、先の自分をイメージすることは大事なことですか?

佐藤 僕はなかったですね。

中村 同じく、なかった。

---- よく、自己啓発系の本には成功した自分をイメージし、そこから逆算して行動することが......云々みたいなことが書かれているじゃないですか。

佐藤 そういう考え方もあるかもしれないですけど、僕はそうではなかったですね。いつ点が取れなくなるかわからないですから。今日のトレーニングで点を取れなければ、週末の試合に出られなくなるかもしれない。ずっとその積み重ねでしたからね。よく3年後、5年後をイメージして逆算と言われるけど、そんな余裕はなかったですよ。

中村 僕は逆算できる人はいつもすごいと思っています。一日一日が必死だったなあ。

佐藤 目の前のことを一生懸命できない人は、その先でもできないと思いますよ。

中村 目の前のことを一生懸命やり続ける延長線にすべてがある、という人生だったので。

佐藤 スーパーな人は先を見据えた行動ができちゃうかもしれないですけど、トータルで見たら少数派だと思います。やっぱり目の前のことを大事にしないといけない。結局はシンプルなんですよ。

(第8回につづく)

【profile】
中村憲剛(なかむら・けんご)
1980年10月31日生まれ、東京都小平市出身。久留米高校から中央大学に進学し、2003年にテスト生として参加していた川崎フロンターレに入団。2020年に現役を引退するまで移籍することなく18年間チームひと筋でプレーし、川崎に3度のJ1優勝(2017年、2018年、2020年)をもたらすなど黄金時代を築く。2016年にはJリーグ最優秀選手賞を受賞。日本代表・通算68試合6得点。ポジション=MF。身長175cm、体重65kg。

佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪→ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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