V目前、川崎の危機を救った新人MFは、伝説のフランス代表を彷彿とさせる

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

Jリーグクライマックス2021

 J1リーグ第33節、首位を行く川崎フロンターレは清水エスパルスに1-0で勝利。2位の横浜F・マリノスが同日、セレッソ大阪に敗れたため、その差は勝ち点12に広がった。川崎の優勝は、早ければ次節(11月3日)にも決まる。
 
 川崎と横浜FMの差は一時、勝ち点1差まで縮んだ。川崎がアビスパ福岡に敗れた8月25日(第26節)終了時である。逆転は時間の問題であるかのように思われた。

 桐蔭横浜大学から今季、川崎に加入した新人、橘田健人も、その福岡戦に出場していた。そこまで橘田は26試合中17試合に出場。だが先発は4試合にとどまっていた。ポジションは4-3-3のインサイドハーフ。田中碧、脇坂泰斗、旗手怜央に次ぐ4番手の扱いだった。

清水エスパルス戦にフル出場、勝利に貢献した橘田健人(川崎フロンターレ)清水エスパルス戦にフル出場、勝利に貢献した橘田健人(川崎フロンターレ)この記事に関連する写真を見る 168センチ、65キロ。線の細さが気になる選手だったが、福岡に敗れた第26節を機に、橘田の出場機会はグッと増えていく。第33節の清水戦まで8戦中7試合に先発。驚くことに、途中でベンチに下がったケースはわずかに1試合だけだ。1度だけの交代出場も、後半の頭からという早さだった。この直近8試合の出場時間は、フィールドプレーヤーのなかでは山根視来に次ぐ多さを示す。ベンチからの信頼のほどがうかがわれた。

 チームは福岡戦以降、7連勝を飾り、1差に迫られた横浜FMとの勝ち点は12に開いた。川崎の優勝を語る時、橘田は欠かせない選手になっているはずだ。福岡戦の次々戦(徳島ヴォルティス戦)を機に、ポジションもインサイドハーフから4-3-3の1ボランチ(アンカー)へと変わっている。それまで不動のスタメンだったジョアン・シミッチを押しのけて、である。

 その後、ベンチにも入らなくなったシミッチに何があったのかは定かではないが、183センチ、80キロのシミッチに比べると橘田は著しく小型だ。しかも、川崎の基本布陣は4-2-3-1ではなく4-3-3。守備的MFを1枚しか置かないサッカーだ。新人の橘田には荷が重いのではないかと心配したものだ。ところが、そこから川崎は連戦連勝。すっかり波に乗ることになった。

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