「大激震のヴェルディ」で、なぜ永井秀樹は監督続投を決めたのか? (2ページ目)

  • 会津泰成●文 text by Aizu Yasunari
  • photo by Getty Images

「普段のミーティングでも繰り返し、『できない言い訳をするのはやめよう』と選手には伝えてきた。厳しい環境、厳しい条件、他のクラブと比べたり、できない言い訳を並べても成長しない。そう話している自分自身も同じ。例えば、『1シーズンで確実に20点以上決めてくれるストライカーがほしい』とか『フリーキックを3本蹴ったら、必ず一度は決めてくれる選手がほしい』などとは言えない。

 たしかに厳しい状況なのは間違いないが、だからと言ってプレーする以上、監督を引き受けた以上は、言い訳はできない。できる範囲で、できる限りのことを100パーセントやるのが大切。自分も覚悟を決めてやってきたつもりだし、来シーズンも変わらぬ気持ちでやり続けようと思っている」

 経営問題が混沌とし、続投要請にも時間のかかるなか、永井には非公式ながら他クラブからのアプローチもあった。しかし、ヴェルディからの監督続投要請に対して即答で快諾。背中を押したのは前述したような選手たちの姿だった。

「監督経験の浅い自分に対して、他のクラブから評価していただけたことは純粋にうれしかった。でもヴェルディから続投要請があれば、天秤にかけるような気持ちは微塵もなかった。子供の頃から憧れて、プロサッカー選手としてのスタートを切り、いい時もそうでない時も共に歩んできたヴェルディを再建することが自分の夢。監督を続けることは自分で決められることではないけれど、必要と考えていただけて信じてくれる選手がいる限りは、最後までやり通したい。

 そして永井は来シーズンに向けてこう決意する。

「来シーズンはさらに厳しい中で戦わなければならないかもしれない。でも、うまくいかなかなければすべては監督の責任。批判を浴びるのは選手ではなくて自分一人でいい。もちろん、批判されるのは気持ちのいいものではないけれど、監督という立場はそういう役割。不甲斐ない試合を見せられて『ふざけるな!』と叫んでしまうファンやサポーターの気持ちも理解できる。生活の一部をヴェルディに捧げて応援してくれているわけだし、ヴェルディが好きだからそういう気持ちにもなる。

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