「お家芸」に全集中。V候補・青森山田が劣勢を制して3年連続8強へ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 高橋 学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 まずは、敗者の健闘を称えたい。

 全国高校サッカー選手権3回戦、帝京大可児vs青森山田。終わってみれば、青森山田が4-2で勝利し、3大会連続となるベスト8進出を決めた試合ではある。

 だが、帝京大可児はいきなり前半7分にして先制点を奪うと、その後、逆転を許してからもボールを保持して、ゴール前まで押し込む時間を長く続けた。内容だけで言えば、青森山田を上回っていたとさえ言える。

「マイボールの時間を増やすことがポイントだと思っていたが、1試合を通して(自分たちの持ち味を)出せなかったのは課題」

 そう話す帝京大可児・仲井正剛監督の自己評価は厳しかったが、常に相手の動きの逆を取り、面白いように青森山田の選手をかわしていくパスワークは実に鮮やかだった。

 特に後半は、キャプテンのMF小宅空大が口にした「(前半は青森山田の)高さやセットプレーの強さにやられてしまったが、後半は持ち直して自分たちのサッカーができた」の言葉どおり、相手を手玉に取ったと言ってもいいほどの内容だった。

 とはいえ、勝ったのは青森山田である。

 キャプテンのDF藤原優大が「後半、2点は取れたが、守勢に回って相手ペースで試合が進んでしまい、不本意だった」と試合を振り返ったように、青森山田は相手ボールを追いかける場面ばかりを増やした。

 今季は全国トップレベルのチームが集まるプレミアリーグが開催中止となり、「強豪と言われるようなチームと試合をやっていない」と藤原。本来なら「プレミアリーグ(の試合)は守りに回る時間が長く、そこで学ぶことは多い」が、そうした厳しい経験を積むことなく迎えた今大会は「青森山田のサッカーができないまま3回戦まで来てしまった」と反省を口にする。

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